2014 Fiscal Year Research-status Report
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26640114
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
山岡 吉生 大分大学, 医学部, 教授 (00544248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 留美子 大分大学, 医学部, 助教 (70599092)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / ヘリコバクター属 / 動物 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
Helicobacter pylori (H. pylori)は胃癌のリスクファクターとして知られており、宿主であるヒトとの進化的並行性を利用して菌の系統関係から宿主である人類集団の系統関係や移動経路の推定がなされている。しかし、H. pyloriがどのようなソースから人類への感染を確立つしたのかは謎である 我々はこれまで、世界各地のH. pyloriゲノムを解析してきたが、アラスカ先住民から採取した菌の中に、部分配列や16s rRNAは通常のH. pyloriに近いが、ゲノム構造が他と大きく異なり、大型猫科動物を宿主とするH. acinonychisに似ている株を発見した。このような特異なゲノム構造は当初1株のみに見られたが、その後のゲノムDNAシーケンシングによって、アラスカ9株中4株が特異なゲノム構造を持っていることがわかった。また、GenBankに登録されているカナダの菌にも同様のゲノム構造が見られ、アメリカ大陸の極北部に特異的な菌だと考えられる。 アメリカ大陸北部原住民の食習慣から、我々はこのような特異的な菌が草食獣に由来するのではないかという仮説を立てた。また、病死したトナカイの胃内にH. pylori様の菌が見られたという動物衛生研究所のレポートを見いだし、動物衛生研究所から、H. pylori様の細菌を含むトナカイおよびオセロットの胃の組織のパラフィンブロックを提供していただいた。オセロットの方が含まれている菌が多いので、まずコントロールとしてオセロットサンプルからDNAを抽出し、16s rRNAのPCRを行ったがバンドは検出されなかった。また、サファリパーク(姫路セントラルパーク)のご協力により、8種の草食獣の糞便サンプルを45検体採取していただいて、16s rRNAのPCRを行い、こちらは45検体中37検体でバンドを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
技術補佐員の移動など人員体制の変動があり、当初の予定より作業が遅延している。コントロール実験として行った16s rRNAのPCRで、細菌を多く含むオセロットの胃組織DNAからバンドが検出できなかった要因としては、DNAの断片化が考えられる。抽出されたDNA中の断片が、設定したプライマー間より短い場合、PCRでは増幅ができない。これに対しては、今年度は異なるアプローチを行う予定である。 大学内共通機器として次世代シーケンサーが導入されたが、当初は学内に利用経験者がいなかったので、高価な試薬やDNAサンプルを無駄にしないためにも、学内で実験手技が高い実験者にプロトコルを確立してもらい、本研究室のメンバーがその実験者から技術の習得に努めた。昨年度はトレーニング期間として、ふんだんに取得可能な培養菌体からのDNAを用いてシーケンスを行ったが、量に限りがある本研究のサンプルはまだ用いていない。今年度は実験担当者の手技も向上したので、実験を推進する。
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Strategy for Future Research Activity |
あオセロットの胃組織DNAからは16s rRNAのバンドは検出されなかったが、トナカイサンプルについても、まずは16s rRNAのPCRを行う予定である。オセロットサンプルと同じようにバンドが検出されない場合は、次世代シーケンサーによる網羅的なシーケンスを試みる。次世代シーケンサーから得られるショートリードデータは、宿主動物DNAと菌DNAの混合物となる。顕微鏡像では胃内の細菌は1種のみが確認されており、宿主と菌の2種の判別を行えばよい。哺乳類とHelicobacter属細菌のゲノムはGC含量が大きく異なるのでGC含量だけでもある程度判別できるが、我々はバイオインフォマティクス的手法を取り入れ、3塩基配列の出現頻度に基づいた判別を行う。判別されたデータはde-novoアセンブリで繋げて相同性検索を行うか、あるいはアメリカ大陸北部特異株に対してリファレンスマッピングを試み、近縁性を探索する。 動物糞便からのDNAからは16s rRNAのバンドが検出され、細菌のDNAの状態は比較的良好であると思われる。ただしサンプルはさまざまな細菌のDNAの混合物である。今回の我々の目標は網羅的な腸内細菌叢の調査ではなく、草食動物の消化管細菌からH. pyloriと関連性のある菌を探し出すことなので、ターゲット遺伝子を設定し、PCR およびサンガーシーケンスで確認を行う。 ターゲット遺伝子は、H. pyloriの中では最も祖先種に近いhpAfrica2グループの菌と、アメリカ大陸北部特異株の遺伝子から選定する。これらの菌の系統特異的遺伝子を推定し、それに対するプライマーを設計して動物糞便DNAからの検出を試みる。
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Causes of Carryover |
本年度は、検体を得てDNAを抽出してPCRを行う段階にとどまっているため、多くは既存の試薬などで実験を遂行することができたため、本研究用の物品を使用する必要がなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、次世代シーケンサーを用いた解析などが予定されており、多量の消耗品が必要となる。
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Research Products
(28 results)