2014 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病に特徴的な病巣が脳内に伝搬する分子機序の解明
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26640122
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
桑野 良三 新潟大学, 脳研究所, フェロー (20111734)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 脳組織 / 遺伝子発現 / RNA / 低分子RNA |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病は一旦獲得した高次脳機能が不可逆的かつ段階的に失われていく脳の病気である。本人がアルツハイマー病の初発症状である“もの忘れ”を自覚したとき、脳病変は進んでおり元の健康な脳に戻れない。しかも発病後は有効な根本治療薬が無いのみならず、症状を停止させる薬も無い状況である。従って、無症候期に正確な診断を行い的確な予防対策、軽度認知障害の段階にあっては治療的介入を行う先制医療が求められている。しかし、既にアルツハイマー病を発病した460万人を放置して良い訳はない。脳組織を対象として健康脳から発症~重症に至る病態の本質的進行過程を表現する分子を同定する研究は重要である。アルツハイマー病は生活環境や内的環境因子に加えて遺伝要因がベースにあるが、受精後はゲノム配列は不変であるので、配列解析だけでは加齢に伴っては発症する分子機序の解明には限界がある。本研究では、パーソナルゲノム情報を基盤にしたアルツハイマー病固有の遺伝子発現制御が存在すると仮定して、脳内で実際に機能するRNAを直接解析することを試みた。アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、レヴィー小体病、ALSは、それぞれ固有のタンパク分子が凝集・蓄積し脳組織内を特定の方向に広がっていく特徴がある。アルツハイマー病については、2大特徴である老人斑と神経原線維変化の量的空間的時間的変化が臨床病勢に深く関連することが判ってきたので、脳部位ごとに病理変化(Braak分類)に伴う遺伝子発現RNA量の変化を測定した。神経病理学的に診断された剖検脳を用いて、アルツハイマー病の病勢を反映すると考えられる空間的時間的に変動するノンコーディングRNAの候補を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの共同研究実績と信頼の上に立って脳病理標本の提供を受けたことにより、着実に研究が進捗した。既設の次世代シークエンシングも、新学術領域研究および基盤研究を通した豊富な実験の経験の積み重ねがあって、RNA抽出、専用サンプル調製、シークエンシング操作も順調に進めることができた。シークエンサーから出力される生データをサーバーに保存した。これらの生データのクリーニングを行うと共に、公開データの参照および無料解析ツールを活用して、ノンコーディングRNAの染色体上の座位決定や発現量を計算したので、統計解析学的に検討できる段階までの研究を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
H26年度に取得したマイクロRNAをはじめとするノンコーディングRNA量とシークエンス情報を、神経病理学者とアルツハイマー病脳の進展についてディスカッションする。同時に、情報学の専門知識のある研究者の協力を得て既知未知ノンコーディングRNAの情報解析をする。これらの結果から、さらに追加すべき検体があれば同等の方法を採用する。H26年度に同定したマイクロRNAに関して、神経細胞由来の培養細胞を用いた導入実験による生物学的検証をおこない、国内のみならず国外の神経病理学者および情報学者と意見交換する。
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Causes of Carryover |
初年度予定の大半の解析は終了したが、追加試料の提供がある。追加試料の解析に使用。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加試料の解析費用と成果発表に使用予定。
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Research Products
(3 results)