2015 Fiscal Year Annual Research Report
DNAメチル化紋様形成機構の構成的理解:合成エピゲノミクスへの挑戦
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26640131
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 隆司 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90201326)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | dCas9 / ヒストンアセチル化 / ヒストンメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、CRISPR/Cas9の系を用いてエピジェネティック修飾酵素を出芽酵母ゲノム上の特定の遺伝子座にリクルートすることによって、特異的なエピジェネティック修飾パターンを創出し、合成エピゲノミクスの可能性を探るところにある。そのための要素技術として、ヌクレアーゼ活性を失ったdCas9を出芽酵母ゲノム中の特定の座位にリクルートする実験から着手した。 初年度に問題が発覚したrRNA遺伝子座の代わりに14コピーのタンデムリピートを形成するCUP1遺伝子座位を標的とした。様々なsgRNAを設計してdCas9-Venusとともに発現させることによって、核内の一点に蛍光シグナルが集積することを確認した。このスポットがCUP1遺伝子座位であることを確認するために、銅の添加によってCUP1遺伝子プロモーターにリクルートされる転写因子CUP2にRFPを融合したCUP2-RFPを共発現する株を作成したところ、銅添加によってVenusとRFPのスポットが重なることが確認できた。 それを踏まえて、ヒストンアセチル化酵素p300の触媒ドメインを付加したdCas9-p300を作成し、有効性が確認されたsgRNAを用いてCUP1遺伝子座位にリクルートする実験をcup2欠損株で行った。この株は銅によるCUP1遺伝子の発現誘導を行う転写因子CUP2を欠くために、銅感受性の表現型を示す。しかし、dCas9-p300をCUP1遺伝子プロモーターにリクルートすると、銅感受性が弱いながらも抑圧された。この結果は転写因子CUP2を欠いた状態であっても、プロモータ周辺が活性型のエピジェネティック修飾パターンとなり、CUP1遺伝子の発現を低いながらも誘導できたことを意味している。 引き続き、H3K9me3の導入を目的にdCas9-DIM5を作成し、HP1-NeonGreenによるヘテロクロマチンの可視化を試みたが、研究期間内には所期の結果は得られなかった。 以上、当初の目的は部分的に達成されて、今後の研究の基礎となる貴重なデータとノウハウが得られた。
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Research Products
(5 results)