2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26640133
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
渡部 暁 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 上級研究員 (80300945)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 合成生物学 / 酵素 / 人工代謝系 / TALエフェクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は複数の酵素からなる複合酵素の、各要素の発現量および空間配置の調節・最適化に関する基本的な仕組みを構築することにある。前年度(H26年度)に遊離の酵素によるモデル代謝系の構築に関する実験が終了したため、今年度(H27年度)は各酵素が特定のDNA配列に配置されるよう、事前に設計されたDNA配列に結合するTALエフェクターとの融合タンパク質(TAL酵素)の発現系構築に取り組んだ。
まず結合される20塩基対(TACTCTATCATTGATAGAGT)のDNA配列を設計した。それを基に異なる変換規則(i.反転(3'-5'を入れ替える), ii 置換(A->T, C->A, T->G, G->C), iii置換かつ反転)により直交性が担保された4種の結合配列を認識するTALエフェクターを設計した。次にGFPレポーターおよび前年度に検討したモデル系の酵素4種(ERG10, ERG13, tHMG1, NphT7)の対象遺伝子について、TAL酵素の大腸菌発現用の発現コンストラクトを作成した。これらを大腸菌の発現株BL21(DE3)株を形質転換したところ、残念なことに、検討したコンストラクトはいずれもコロニーが得られなかった。原因を調査したところ、発現されたTAL酵素(タンパク質)による細胞毒性が原因と考えられる証拠を得たため、現在は細胞毒性軽減するために、コンストラクトの再設計による低毒性化、高制御発現菌株の導入、無細胞タンパク質合成系への移植などの条件を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析に必要な試料調製は本研究の重要なステップであり、試行錯誤が必要なことから時間を要することは事前に予想された。特にTALエフェクターをコードする核酸配列は繰り返し配列を多く含むためDNAシークエンスによる確認が完全では無いため、発現不良であった場合にはその原因がDNA配列にあるのか、タンパク質発現にあるのかの両方を視野に検討を進める必要がある。本課題はその例で、いずれの検討にも試行錯誤が必要であるため時間を要した。対象タンパク質によらず発現不良であることがわかり、個別の遺伝子の発現の問題ではなく、全体に共通する発現条件やコンストラクトの骨格部分に原因を絞り込むことができた。したがって、その改良により、いずれの対象タンパク質の発現も良化する可能性が高いと考えられる。サンプル調製の段階であるため具体的な解析には至らなかったものの、以上の結果より、各要素の発現量および空間配置の調節・最適化に向けて確実な進捗が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質発現に向けて、いくつかの改善案の検討を実施している。 1.細胞毒性の悪影響の無い無細胞タンパク質合成系での発現。2.発現に有利なTALエフェクターの認識塩基を必要十分な短い鎖長への変更。3.TALエフェクター作成キットを実績の豊富なキットへの変更。4.発現リークが最小に抑えられる大腸菌菌株の導入。これらにより試料を得て、複合酵素の、各要素の発現量および空間配置の調節・最適化に関する評価を実施する。
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Causes of Carryover |
研究に不可欠なサンプル調製実験が継続中のため、その結果により変更の可能性のある試薬など一部の消耗品の購入を次年度に持ち越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画に加えて、一部の遅れの出ているサンプル調製実験の結果により必要であることが確定した試薬など一部の消耗品の費用に充てる。
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