2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26650009
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
吉久 徹 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (60212312)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | tRNA / ヌクレオチド修飾 / 非対称分裂 / 品質管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、出芽酵母の分裂の非対称性に着目した傷害tRNAの品質管理の違いの有無を解析するためのシステム構築を主眼とした。単細胞の出芽酵母においても分裂寿命が存在するが、いわゆる年老いた細胞(分裂能を失いつつある細胞)と若い細胞(母細胞から分裂したての細胞)とを比較する際、通常の増殖状態では前者の割合は極めて小さい。そこで、老いた細胞を濃縮する条件をまず検討した。このために、(1)酵母細胞の表面に細胞分裂後に残される出芽痕という構造がキチン質(GlcNAcポリマー)に富むことから、GlcNAc特異的レクチンであるWGA-Sepharoseにより出芽痕の多い細胞を分離する、(2)一度形成された酵母細胞壁は更新されないことを利用し、表層をビオチン化した細胞を一定時間増殖させたのち後にstreptavidin-beadsで回収する、の二つの方法を試みた。その結果、後者で多数回の分裂を経た酵母細胞を回収出来るめどがたった。ただし、tRNAの生化学的分析が可能であるほどの酵母を回収するには、より高効率の手法を採る必要も明らかとなった。一方、傷害tRNAを人為的に蓄積し、かつ、それを簡便に検出するために、8-oxoguanosine(8-oxo-G)という核酸の酸化傷害修飾に着目した。過酸化水素で酵母に酸化ストレスを与えた時、8-oxo-Gを持つtRNAが蓄積するかを抗8-oxo-G抗体を用いたNorthwestern blottingでの検出を試みたところ、時間依存に8-oxo-Gを含むtRNAが増えることが判った。この際、低分子rRNAである5S rRNAや5.8S rRNAには、通常の生育状態でも多くの8-oxo-Gが含まれることも判った。今後はtRNAに加え、これら低分子rRNAについても傷害RNAの酵母内での品質管理を解析してゆく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
老いた細胞の効率のよい回収システムの構築に時間がかかったため、進捗には多少の遅れがある。しかし、下記に触れる新たな手法の導入を含め、本問題は解決の方向が見えている。
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Strategy for Future Research Activity |
出芽時の母細胞のみを選択的に生存させる酵母変異株を開発したグループがある事から、H27年度ではこうした菌株を入手する事でより効率の良い解析系を構築し、研究計画のスピードアップを図る予定である。また、先にも述べたように、tRNAに加えて低分子rRNAで顕著な酸化傷害が発生するという結果も得られた。非対称分裂を行う際の母細胞と娘細胞の間での傷害tRNAの品質管理の違いとの比較対象としても、rRNAの状態を引き続き解析してゆく予定である。
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Causes of Carryover |
一部の執行額の端数分を除けば、研究進捗状況に示した通り、進捗に若干の遅れがあり、それに対応する形で一部消耗品関連の経費の執行を翌年度に延ばさざるを得なかったために生じた残額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度では、予定の研究計画の全体を遂行すべく、H26年度の積み残し実験を含めて研究の実施を急ぐ予定である。研究費についても、昨年度積み残しの計画分としてH27年度に合わせて執行する予定である。
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Research Products
(6 results)