2014 Fiscal Year Research-status Report
高次染色体構造を基質とした生化学及び微細構造解析法の開発
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26650010
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
荒木 弘之 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 教授 (20151160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日詰 光治 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助教 (10378846)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クロマチン / DNA複製 / AFM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞内から種々の染色体タンパク質を含んだ高次クロマチンを、その構造を維持したまま精製し、AFMによる可視化解析および生化学的解析に供する技術を確立することを目的とする。26年度は、標的とする染色体領域として、複製開始領域および複製フォークを含むクロマチンを選択し、その精製方法の条件検討を行った。 まず、複製開始プロセスの解明をめざし、“複製開始領域を含むクロマチンの精製”を実施した。LacO配列と複製開始領域特異的な塩基配列を含むプラスミドを出芽酵母細胞に導入し、このプラスミド上に形成されたクロマチンを、LacI-FLAG融合タンパク質とともに抗FLAG抗体で免疫沈降した。この際、細胞の破砕方法を、細胞壁を融解させる酵素を用いる方法や、グラスビーズを用いた物理的破砕方法などを試した。また、安定にクロマチン構造を維持したままの精製を達成するため、種々の架橋固定剤の効果も試験した。その結果、クロマチンを高い再現性でAFMにより可視化できる手法を確立した。 また、複製フォークが進行を停止する配列を繰り返し含むrDNA領域にLacO配列を導入した出芽酵母を材料としてrDNA領域を精製し、AFM観察に供する実験も実施した。本実験は染色体DNA上の当該領域付近を切断し可溶化する必要があるため、細胞粗抽出液を制限酵素処理した後に免疫沈降処理を行った。しかし、制限酵素処理時の溶液条件によりクロマチン画分が不溶性となり、精製効率が低下したため、グラスビーズ破砕によりクロマチンを細断するなどの検討も行った。その結果、回収効率が未だ低く複製フォークの精製には至っていないものの、クロマチンファイバーの回収はAFM観察により確認できた。 以上のように、高次クロマチン複合体の回収が可能となりつつあることは、次のステップである、「高次構造と生化学的性質の相関の実験的証明」をおこなう実験材料を調製可能とした点において、大きな進展であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、クロマチンの切り出し方法や回収方法の条件検討と、回収されたクロマチンのAFMによる評価を、26年度中に実施することができた。環状DNAを細胞に導入しその上に形成されたクロマチンを単離・精製するのに対し、ゲノム上のクロマチンを切り出して回収するアプローチには実験上の制約が多く、精製効率が低いことが判明したが、27年度に引き続き精製方法の改善を図ることにより、当初の計画通りに研究が遂行できるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、27年度は、前年度までに確立した手法により精製したクロマチンを基質として用いた生化学実験を開始する。具体的には、複製開始因子を含む精製プラスミドに、複製の開始までに機能するタンパク質を混合するなどし、その結合親和性や、複製開始までの反応(2本鎖DNAの開裂や、相補鎖の合成といった反応)の有無、その際のクロマチン構造変化を試験する。 また、26年度までに高効率での精製を達成できなかったゲノムからのクロマチンの切り出しの条件の改善を引き続き行う。当初から使用を検討していた“yeast site-specific recombination R/RS system”を用いるなどして、効率の良いクロマチンの切断・可溶化を目指す。
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Causes of Carryover |
今期は、予備的な実験を種々行った。進展はほぼ予定通りではあったが、より経費の必要な本実験までは至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、今期に確立した手法により本実験を行うため、主として物品費として全額使用予定である。
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Research Products
(1 results)