2014 Fiscal Year Research-status Report
標識スクランブルの影響を受けず、あらゆる発現系で利用可能な選択標識法の開発
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26650027
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
葛西 卓磨 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (70446516)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | NMR / タンパク質 / アミノ酸選択的安定同位体標識法 / 符号化標識法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、未帰属のNMRスペクトルから、アミノ酸ごと・標識体ごとの安定同位体標識率の情報を抽出する手法の開発を主におこなった。研究代表者らが開発した従来の符号化標識法では、標識率が既知であり、NMRスペクトルからアミノ酸の情報を得ることが目的である。それに対して本法では、標識率とアミノ酸の情報の双方が未知であり、探索すべき変数空間は極めて広い。しかし、まずは標識率の正確な情報を取得することが重要であり、アミノ酸の情報はその後従来法により取得できればよいことから、アミノ酸の情報に多少誤りを含んでいたとしても、正しい標識率の情報を得られることを主眼に探索法および評価関数を設計したところ、正しい標識率の推定ができるようになった。本法は広い変数空間を探索する必要があることから、評価関数の計算アルゴリズムを変更し、従来法より3~4倍程度の高速化を実現した。効率的な大域的最適化手法の導入とあわせ、これらの工夫により、標識スクランブルが激しい系など広い変数空間の探索が要求される場合にも対応可能な解析法が構築できたと考えている。この成果は、標識率が既知である従来の符号化標識法においても、多くのシグナルが重なるなど広い変数空間の探索が必要な場合の解析に応用が可能である。また、大域的最適化という点で同様の手法を用いることから、当初計画では来年度におこなう予定であった標識パターンの設計手法の開発も、一部本年度におこない、さまざまな条件に応じて、アミノ酸どうしをなるべく区別しやすくする標識パターンを設計するプログラムを開発した。一方で、標識スクランブルの基礎的データの取得は、本年度中に完了しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画で本年度中におこなう予定であったのは解析手法の開発と、標識スクランブルの基礎的データの取得である。前者は期待以上の成果を得たが、後者は遅れており、来年度引き続き実験を進める必要がある。また、来年度おこなう予定であった標識パターン設計手法の開発について、予定を変更して一部本年度におこなった。全体としては、おおむね計画通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画通り、標識スクランブルの基礎的データを取得したうえで、標識パターン設計に反映させ、実問題への応用をおこないたいと考えている。
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Causes of Carryover |
達成度欄に記載の通り、標識スクランブルの基礎的データの取得のための実験が遅れており、主にその費用について次年度に使用することとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に実施できなかった実験を次年度に実施するため、主にタンパク質調製・NMR測定のための消耗品類を購入する。また、成果発表のための費用に使用する。
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