2014 Fiscal Year Research-status Report
酵素過程の逆反応実現により水から還元力を取り出す試み
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26650031
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
櫻井 武 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90116038)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | プロテインエンジニアリング / 酵素機能 / 酸素発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
マルチ銅オキシダーゼで酵素反応の逆進行を実現することを本研究の目的としている。具体的には、マルチ銅オキシダーゼの共基質である酸素が4電子還元し、水となる反応を逆向きに進めることを目的としている。これが実現すれば、原理的には総ての酵素過程を逆向きに進行させることができるだけでなく、水を酸化して酸素を発生するという、現在、多くの欧米の研究グループによって実現が目指されている反応を酵素を用いて行うことが可能となる。本件研究ではまず、2つのマルチ銅オキシダーゼ、CueOとビリルビンオキダーゼについて、タイプ1銅配位子であるヒスチジンをメチオニンまたはロイシンなどに変換し、酸化還元電位を負または正方向にシフトさせ、活性を上下させることを試みた。実験の結果、予想通り、活性が上昇又は低下することが確認出来たので、変異による各銅部位への影響を確認すべく、まずは、メチオニン置換体の構造を結晶構造解析することとした。現在、この変異体の結晶化に成功し、X線回折データを得る準備中である。一方、作成した変異体では、未だ、反応の逆回転は難しい可能性があることから、さらにタイプ1銅の酸化還元電位の正電位シフトを目指し、タイプ1銅配位子であるシステインやヒスチジンにも変異導入し、3重までの多重変異体を作成した。作成を試みた総ての変異体が作成出来た訳ではないが、多くの変異体作成に成功し、順方向の酵素活性を消失したものを作り出すことに成功した。また、活性部位構造に影響しない出来るだけ穏やかな変異導入を実現するため、タイプI銅や三核銅部位の外圏部の極性を変更させることも計画し、変異体の作成に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行には、まず酵素の段階的な改変が必要であるが、順調に改変を行い、目的とする改変体を作成することができたところである。従って、研究自体は概ね順調に進んでいる。この先の実験をやってみないと構想通りに酵素反応が逆回転するかどうかわからないが、電気化学装置の準備中であり、後1年で目的が実現可能であるかどうかは判定出来るものと思われる。本研究は当初から、中間段階で発表不可能と予想しており、途中段階の成果は外部に全く公表していない。
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Strategy for Future Research Activity |
タイプ1銅の酸化還元電位を正方向にシフトさせた多重変異体および作成予定の変異体の電気化学を行い、水分子を酸化して酸素を発生する実験を行う。現在は更なる変異体の作製と電気化学の予備実験の段階にあり、信頼出来る実験条件を構築した後,酵素による水の酸化反応を試みる。電極系の開発も重要であるので、分子質量の大きなタンパク質との電気的コミュニケーションを実現するため、様々な電極材料も探す予定である。また、発生した酸素の検出や水起源の電子アクセプターのスクリーニングも行う予定である。
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