2015 Fiscal Year Research-status Report
赤血球前駆細胞を利用した転写翻訳に依存しない概日リズム発振機構の解明
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26650033
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大川 妙子 (西脇妙子) 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (30432230)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 概日リズム / レドックス制御 / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
概日時計は細胞に内在する約24時間周期の振動体である。現在概日時計の発振機構として概日時計遺伝子の転写・翻訳のネガティブフィードバックループモデル広く受け入れられている。この反例として、2005年にシアノバクテリア概日時計蛋白質KaiCリン酸化リズムのin vitroで再構成が報告されたが、真核生物においてはこのようなリズムはまだ報告がない。本研究では細胞内の酸化還元状態に着目し、転写・翻訳のフィードバックループに依存しない概日リズムの解析を行う。平成27年度は、昨年度に引きつづきMEDEP BRC5の脱核赤血球への分化など細胞培養方法の確立、および蛍光蛋白質Redoxfluorを利用した細胞内の酸化還元状態のモニターを試みた。MEDEP BRC5については、培養条件の検討や塗抹標本の作成法の改善などに取り組んだが、今のところ完全に脱核された細胞集団を得るには至っていない。一方、ヒト骨肉腫由来のU2OS細胞株にCRISPR-Cas9法を適用することにより、時計遺伝子破壊株を樹立できた。またヒトU2OS細胞株より得られたRedoxfluorおよび酸化還元非感受性のコントロール蛋白質の安定発現株約50クローンについて、蛍光プレートリーダーを用いて、各ウェルからのFRETシグナルを経時的に測定した。しかしながらRedoxfluor発現株、コントロール蛋白質発現株ともにシグナルの日内変動は確認できなかった。さらにFRET測定が可能な蛍光顕微鏡を用いて1細胞レベルでの観察も行ったが、細胞内のいずれの部位においても日内変動は見いだされなかった。過酸化水素で細胞を刺激した場合にはわずかにシグナルの変動が観測されたものの、酸化還元状態の日内変動は過酸化水素刺激による変動に比べてさらに小さいことが予想されるため、この方法で検出するのは困難であると判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MEDEP BRC5の培養については、脱核赤血球に分化させた均一な細胞ポピュレーションを得るに至っていないが、代替法として、培養が容易なヒトU2OS細胞にCRISPR-Cas9法を適用して樹立した時計遺伝子破壊株が利用可能となった。Redoxfluorについては、蛍光プレートリーダーを用いてFRETによる測定を検討したが、今のところ酸化還元リズムの検出には成功していない。しかしながら、酸化還元電位の電気化学的手法による検出の有効性がシアノバクテリアにおいて確認されたことから、この方法を動物細胞に適用できる可能性が示唆された。以上より当初の予定とは異なるものの、これらの代替索を進めることによって目的が達成できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は引き続きMEDEP BRC5から均一な脱核赤血球様細胞の調製法を検討した後、抗酸化型ペルオキシレドキシン抗体を用いてペルオキシレドキシンの酸化状態がフィードバックループによらず概日リズムを示していることを確認するとともに、レドックス制御関連化合物ライブラリー中の化合物を投与し、リズムへの影響を確かめることによって発振機構に関する手掛かりを得る。また、U2OS細胞にpBmal1::luc遺伝子を導入したレポーター株を用いて、上記のライブラリー中の化合物が転写・翻訳リズムに及ぼす影響も併せて調査し、蛋白質レベルのリズムと転写・翻訳リズムの関係について考察する。さらに、細胞内の酸化・還元状態を無侵襲で測定する方法として、電気化学的手法の検討も進め、U2OS細胞の元の株および時計遺伝子破壊株、およびMEDEP BRC5由来の脱核赤血球様細胞を用いて酸化還元電位の経時的な測定を試みる。
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Causes of Carryover |
研究室の新研究棟への移転、建物の不具合による待避および再度の移転に伴い、約2ヶ月間研究を中断せざるを得なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に持ち越した細胞培養条件を確立するため、細胞培養用試薬類(培地、無血清培養用各種添加物)細胞培養用のプラスチック器具類、およびリズム検出用の抗体類などの消耗品の購入に使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] C-H activation generates period-shortening molecules that target crptochrome in the mammalian circadian clock2015
Author(s)
Tsuyoshi Oshima, Iori Yamanaka, Anupriya Kumar, Junichiro Yamaguchi, Taeko Nishiwaki-Ohkawa, Kei Muto, Rika Kawamura, Tsuyoshi Hirota, Kazuhiro Yagita, Stephan Irle, Steve A. Kay Takashi Yoshimura, Kenichiro Itami
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Journal Title
Angewandte Chemie International Edition
Volume: 54
Pages: 7193-7197
DOI
Peer Reviewed
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