2014 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド光検出器を使った高速度一分子蛍光観察法の開発
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26650045
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (30283641)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ラインフォーカス型共焦点顕微鏡 / 一分子蛍光観察 / ハイブリッド型フォトダイオード / 石英製顕微対物レンズ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ラインフォーカス型共焦点顕微鏡を用いた一分子蛍光観察装置の深化:ラインフォーカス型一分子の蛍光観察装置を用いて、タンパク質のフォールディング運動を観察した。プロテインAのBドメインについて、二つのラベル化試料を一分子観察し、サブミリ秒の時間領域で揺らぎ運動を行うことを見いだした。さらに、量子収率の補正方法等、一分子観察実験を行うための数々のノウハウを蓄積した。 2)ハイブリッド型フォトダイオード(HPD)とラインフォーカス型共焦点顕微鏡を組み合わせた高時間分解能一分子観測装置の開発:HPDを用いることで、一分子蛍光観察実験の時間分解能を劇的に向上できる可能性がある。実際にHPDを装置に組み込んだところ、10マイクロ秒の時間分解能で10ミリ秒程度の観測時間にて一分子蛍光観察が可能になった。これは、我々の従来の装置の一桁以上の時間分解能の向上と観測時間の数倍の向上に対応する。本装置を用いてプロテインAのBドメインの計測を行ったところ、変性状態の中に多数の副状態が存在し、副状態間の遷移をおこしながら揺らぐ様子が観察された。 3)石英製顕微対物レンズを用いた共焦点顕微鏡の背景光の低下:開発した装置は、劇的な時間分解能の向上が期待できることが示されたが、ライン共焦点顕微鏡特有の問題として、背景光が強いことが問題であることがわかった。また、背景光の主要因が顕微レンズによる自家蛍光であることがわかった。そのため、自家蛍光が少ない石英製顕微レンズを用いて背景光の低下を図った。メーカーのデモ品を用いたテストでは、従来の顕微レンズを使った場合に比べて、背景光が数分の一に低下することがわかった。これにより、さらに装置の時間分解能の向上が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記に説明した通り、本研究は想定以上の進展を示している。特に、石英製顕微対物レンズを用いることで、装置の背景光レベルを低下させることで、驚くほどのデータの質の向上が図られた。これは想定しなかった進展であり、注意深い実験の工夫から生まれたものである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、石英製顕微対物レンズを用いたシステムによるデータ取得に集中して取り組み、装置のデモンストレーションとしての論文化を目指す。さらに、高繰り返しピコ秒パルスレーザーと組み合わせることで、蛍光フォトンを一個づつ時分割計測し、一分子レベルで蛍光寿命測定を行う実験を可能にする。また、装置を用いた蛍光相関測定を可能にする。
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