2014 Fiscal Year Research-status Report
enChIP法を用いたミトコンドリアDNAの高次構造解析
Project/Area Number |
26650059
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤井 穂高 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (30302665)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ミトコンドリア / 遺伝子座特異的クロマチン免疫沈降法 / クロマチン / enChIP / CRISPR / ミトコンドリアDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類動物細胞の遺伝情報は、核とミトコンドリアという二つの細胞内小器官に存在している。核内DNAについては、クロマチン構造や転写因子等が詳細に解析されている一方、ミトコンドリアDNA (mtDNA) の高次構造や転写調節機構については限られた情報しかない。本研究提案では、申請者が開発したengineered DNA-binding molecule-mediated chromatin immunoprecipitation (enChIP) 法を用いて、分子間相互作用を保ったままmtDNAの転写調節領域を単離し、そこに結合している分子(蛋白質・RNA等)を網羅的に同定し、それらの分子がmtDNAからの遺伝子発現等の機能発現に果たす役割を解析する。こうした解析によって、mtDNAのクロマチン構造や転写制御機構の詳細を解明する。当該年度には以下の研究を行った。 1. ミトコンドリア・マトリックスに局在するタグ付きCRISPR複合体発現系の構築:まず、不活性型Cas (dCas9) 蛋白質にPAタグとミトコンドリア局在シグナルを融合させたPA-MT-dCas9蛋白質を発現するプラスミドを作製した。この発現ベクターをヒト細胞株293T細胞に一過性に発現させ、発現させたPA-MT-dCas9がミトコンドリア・マトリックスに局在することを、ミトコンドリアを単離して免疫ブロット解析により確認した。次に、mtDNAの転写を制御しているD-loop近傍を認識するガイドRNA (gRNA) を発現するプラスミドを構築した。 2. enChIP法によるmtDNAの単離効率の検定:次に、実際にenChIP法によるmtDNAの単離が可能か否かを検討している。293T細胞にPA-MT-dCas9とgRNAを発現させ、enChIP操作後、免疫沈降物中に含まれるmtDNA量をリアルタイムPCR法を用いて定量し、inputに対する%としてスコア化する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
enChIP法の進展により、使用する外来性DNA結合分子をTAL蛋白質から、CRISPR系に変更した。これにより、mtDNA内の標的配列を柔軟に選択することが可能となった。既に、細胞からのミトコンドリアの単離法を確立している。また、PA-MT-dCas9蛋白質を発現するプラスミドを作製済みであり、PA-MT-dCas9蛋白質のミトコンドリアでの発現も確認している。更に、mtDNAのD-loop近傍を認識するgRNAを発現するプラスミドを構築済みであり、これらのツールを用いて、分子間相互作用を維持したままmtDNAのD-loop領域を単離できるか否かの検討まで進んでいる。PA-MT-dCas9蛋白質及びgRNAは、一過性に発現させる系と、発現ベクターが安定的にゲノムDNA内に保持される系の二つを用意しており、enChIP効率及び用いる質量分析解析の種類を勘案してどちらを使用するかを決定する。
|
Strategy for Future Research Activity |
Inputに対するenChIP効率が数%以上であることが確認できれば、5千万個程度の細胞を用いてenChIP-質量分析解析によりmtDNAのD-loop領域に結合する分子(蛋白質、RNA)を同定する。同定された分子に関するこれまでの文献情報や、質量分析解析から得られる結合の特異性等の情報を基にして、解析を進める分子の優先順位を付ける。まず、ChIP法やオリゴヌクレオチドを用いたアフィニティー精製を用いて候補分子がD-loopに結合していることを確認する。次に、shRNAやCRISPR系を用いたloss-of-function実験により、候補分子の機能欠損がミトコンドリア機能に与える影響を解析する。ミトコンドリア機能の指標として、mtDNAからの遺伝子発現量、mtDNAのコピー数、ATP産生能、細胞死アッセイを用いる。
|