2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26650063
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
阪口 雅郎 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (30205736)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 細胞オルガネラ / シグナル配列 / トランスロコン / 膜タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞の分泌経路のオルガネラ膜の膜タンパク質は、小胞体で膜に組み込まれ、小胞輸送で最終存在部位へ運ばれる。小胞体への標的化は、疎水性の高いアミノ酸配列からなるシグナル配列によって担われている。一方、ミトコンドリアやペルオキシソームの膜タンパク質は高い疎水特性を有するにもかかわらず、この小胞体標的化機構を回避して、合成完了後にそれぞれへ移行する。ABC輸送体ファミリーのペルオキシソーム型アイソフォームであるABCD3のN-末端に、小胞体標的化を抑制するモチーフ(N12と略)が存在することを見出し、作用特性を研究してきた。本研究では、N12に作用するタンパク質因子の解明を通して小胞体回避機構の解明を目指した。N12との化学架橋反応を活用した生化学手法や、N12に近接するタンパク質をビオチン化によって追跡する細胞生物学的手法、酵母ツーハイブリッド法など、原理の異なる複数の手法を試みた。BioIDを活用したビオチン化による検出、酵母ツーハイブリッド法による結合因子のスクリーニングでは有意な因子の検出同定には至らなかった。無細胞系で作成したN12をアミノ末端に含む新生ポリペプチド鎖リボソーム中間体と化学架橋反応を利用して、2種のタンパク質性因子の検出に成功し、この複合体をショ糖密度勾配法で精製することによって架橋効率が格段に向上することを明らかにした。この架橋反応系を指標として、ウサギ網状赤血球溶血液より、硫安分画、疎水性クロマトグラフ、イオン交換クロマトグラフ、ショ糖密度勾配遠心分画によってN12作動性因子の精製を実行した。その結果、活性と相関良く分画される数本のポリペプチド鎖の検出にまで至っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、化学架橋反応を活用し相互作用因子の検出に成功し、さらに架橋プローブであるリボソーム新生鎖複合体をショ糖勾配遠心で部分精製することによって架橋反応を効率化できた。さらに、生化学的分画後の因子の検出が可能になった。この成果は、親和性クロマトグラフ法、酵母ツーハイブリッドスクリーニング法、BioIDによるビオチンラベル法、などの多様な方法論でも達成できなかった後、可能となった。この検出系を使って、様々なクロマトグラフィー画分での因子の検出が、再現性良く定量的に可能となった点は評価に値すると考える。分画を進めて、結合因子と考えられる候補タンパク質の絞込みが可能な段階に到達している。また、N12作用に決定的に重要な5番目のSer残基に重要性を全長のABCD3分子で確認できていなかったが、細胞内分解による複雑さを克服して、全長においてSer5Ala変異体は小胞体に標的化することを実証した点も特筆すべき進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、生化学分画によって絞られたタンパク質を質量分析法によって同定し、候補タンパク質の組み換え型を発現し、それらの精製標品を使った結合活性の確認、ドミナントネガティブ作用の検討、ノックダウンの効果の検討、ノックアウト動物の作出と表現形の検討、過剰発現の効果の検討、培養細胞での局在の検討などを通して、小胞体標的化抑制因子としての作用を明らかにする。さらに、抗体作成を行い、その阻害作用、内在性タンパク質の細胞内局在、臓器による発現の違いを調べる方向性で鋭意進行の予定である。
|
Causes of Carryover |
今年度、化学架橋によるアッセイでN12モチーフ作用因子の精製のメドがたったが、その同定のための質量分析が次年度に持ち越しとなったため、その費用を次年度使用とした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、タンパク質の質量分析のための、タンパク質の精製、電気泳動機器の整備、質量分析の委託費用として使用する予定である。
|
Research Products
(10 results)
-
[Journal Article] A few positively charged residues slow movement of a polypeptide chainacross the endoplasmic reticulum membrane2014
Author(s)
Yamagishi, M., Onishi, Y., Yoshimura, S., Fujita, H., Imai, K., Kida, Y.,and Sakaguchi, M.
-
Journal Title
Biochemistry
Volume: 53
Pages: 5375-5383
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-
-
-