2014 Fiscal Year Research-status Report
ギャップ結合によるTuring波形成の普遍性の検討
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26650078
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡邉 正勝 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (90323807)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 反応拡散 / ギャップ結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、これまでのゼブラフィッシュを用いた実験により明らかとなった研究成果:①ギャップジャンクションの構成要素の1つであるコネキシン41.8がゼブラフィッシュの体表模様形成に大きく関与する。②ギャップ結合がTuring patternのバリエーションを与えるパラメーターの調整に関与している。という事実に基づき、この現象が他の生物でも見られる普遍的な現象であるか否かを実験的に検証することを目的とする。H26年度は、ゼブラフィッシュ以外の生物(主に魚類)におけるコネキシン遺伝子のデータベース検索、研究室内での飼育、効率的な受精卵の回収、トランスジェニックラインの作製を計画していた。哺乳類では約20種類のコネキシン遺伝子存在するが、ゼブラフィッシュでは約40種類のコネキシン遺伝子が存在する。ゲノムプロジェクトが進行している他の魚類のゲノムデータを検索したところ、多くの魚類では重複したコネキシン遺伝子はあまり検出されなかった。このことは他の生物ではコネキシン41.8がTuring patternにバリエーションを与えている可能性が低いのではないかと考えられる。しかしながらTuring patternの形成への関与を否定するものではない。この件に関して、①色素細胞における発現コネキシン遺伝子の検出、②トランスジェニックラインの作製によりコネキシンの関与を検証。の2つの実験を行うこととした。①に関しては、現在、ゼブラフィッシュのNGS解析を進めており、実験条件が整い次第、他の魚類のNGS解析を行い発現コネキシンの検出を行う。②に関しては、本年度はメダカ、シクリッド、クマノミの飼育を行い、それぞれから受精卵の回収を行う条件を整えた。次年度に遺伝子組み換え体の作製を行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで魚類に起こったゲノム重複によりコネキシン遺伝子が倍化したと考えていたが、H26年度に行ったゲノム解析の結果コネキシン遺伝子の重複はゼブラフィッシュ特異的あるいはゼブラフィッシュに近い系統で起きている可能性が示唆された。一方で、最近ゼブラフィッシュの体表模様形成に重要であることが分かったコネキシン39.4遺伝子が魚類全般にわたり広く存在していることから、魚類の多様化に重要な因子であることが示唆された。H26年度途中にシクリッドゲノムプロジェクトの解析結果が報告された。シクリッドは体表模様を持ち、遺伝子組み換えの例が報告されている有用な魚類であるため、今後より詳細な解析を進める必要がある。H26年度に計画していた遺伝子組み換え体を用いた解析に関しては、いくつかの種での遺伝子組み換え体作成まで進行する計画であったが、飼育経験がない種であったため本年度は手始めに数ペアの組み合わせで飼育を開始した。このため定期的に十分量の受精卵をとるに至らず、現時点で遺伝子組み換え体の取得には至っていない。H27年度は順次実験規模を拡張し、安定して受精卵を回収するシステムを作り上げて実験の速度を上げる計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
多くの種を一度に大量に扱うことは困難であるため、体表模様を持ち遺伝子操作可能な魚類としてタンガニイカ湖産シクリッドを中心に扱う。飼育規模を拡充し、遺伝子組み換え体の作製を進める。また、単独ではすべての実験が困難であるため、適宜、学外の研究者との共同研究を進める。ゼブラフィッシュを用いたこれまでの研究により、ギャップ結合の関与の検討にはN末ドメインを6アミノ酸欠失させた変異型コネキシンを導入することによりドミナントネガティブ効果を誘発し、内在性のコネキシンの機能をさえることが明らかとなってきた。また、コネキシン43のN末ドメイン変異体もコネキシン41.8及び39.4の抑制に効果的であることが分かった。コネキシン43は生物種間で非常に保存性が高く、ゼブラフィッシュとヒト間でも相同性80%、類似性94%とよく保存性されている。このため、ゼブラフィッシュのCx43変異体を多種生物の色素細胞に導入することにより、それぞれの生物の色素細胞由来のギャップ結合を抑制できることが期待される。H27年度はこのコンストラクトをシクリッドなどのゼブラフィッシュ以外の魚類に導入することにより、ギャップ結合によるTuring波が形成されるかどうかの検証を行う。
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Causes of Carryover |
これまでに研究室で飼育したことが無かった生物種の飼育に対して、予備実験・条件検討として数ペアの魚を使い、小規模で実験を開始した。開始直後は飼育のノウハウがなく、水質の調整などに時間をとられ、飼育のノウハウを取得するのに時間がかかってしまった。このため、H26年度はほとんどの予算を使用しなかった。しかしながら、これまでの条件検討でやっと飼育が安定化し、定期的に産卵できるようになったため、次の段階として、規模を大きくして、遺伝子組み換え実験へと進める状態になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H26年度の小規模な飼育により、飼育のノウハウを取得することができたと考えられる。H27年度は、H26年度分の予算を飼育水槽システムと魚類生体の購入費として使用し、実験規模の拡充を図る。特に研究材料となる熱帯魚は一匹数万円と高額な材料であるが、本研究推進のためある程度数そろえる必要があり、これに予算を使用する。
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