2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞のキラリティの初代細胞培養系を用いた検出と形成機構の解析
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26650081
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松野 健治 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60318227)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 細胞キラリティ / 細胞極性 / 左右非対称性 / ショウジョウバエ / 中心体 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞の極性は組織や器官の機能に必要であり、その破綻はヒト疾患の原因となる。研究代表者は、新規な細胞極性として、細胞キラリティ(左右に歪んだ細胞形態がその鏡像と重ならない)の存在を明らかにしている。この発見の発端となったのは、ショウジョウバエ胚の消化管が、上皮細胞の頂端面(内腔側)の形態が左右非対称になることで、左右非対称な形態をとることである。他のグループの研究によって、細胞のキラリティは脊椎動物の培養細胞においても認められることがわかった。しかし、細胞キラリティが形成される機構の関しては、アクチン細胞骨格の構造の関与が示唆されている以外は、ほとんど理解されていない。そこで、本研究では、ショウジョウバエ胚由来の細胞でキラリティを検出し、このシステムを用いて細胞キラリティの形成機構を明らかにすることを目的とする。 平成26年度の研究では、ショウジョウバエ蛹の体液から得たヘモサイトを培養し、それが細胞キラリティを示すことを明らかにした。GAL4/UASシステムを用いて、ヘモサイトの中心体をUASp-GFP-centrosomine1、核をUAS-RedStingerを発現させることで可視化して、シャーレの下からのタイムラプス撮影によって中心体と核の位置の関係の経時的変化を計測した。核の中心と中心体を結んだ直線とy軸、中心体を通りy軸と直行する直線をx軸とする、二次元座標を設定した。ヘモサイトを培養し、任意の時間でxy座標を設定し(中心体の位置は(0,0))、1時間後の中心体の位置をzy座標上にプロットした。その結果、中心体は、右上か左下に位置することがわかった。細胞の上下を考慮すると、この中心体の移動パターンはキラリティを示す。本研究によって、ショウジョウバエ培養細胞がキラリティを示すことが初めて明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ショウジョウバエの培養細胞系で細胞キラリティを検出し、細胞培養系の利点をいかして、細胞キラリティが形成される機構を明らかにすることである。平成26年度の研究では、目的達成のための第一段階として、ショウジョウバエ蛹の体液から得たヘモサイトを培養し、中心体の移動を指標として細胞キラリティを検出することに成功した。さらに、GAL4/UASシステムを用いて、UAS-LifeActをヘモサイトで強制発現させ、これを培養してアクチン細胞骨格をライブで可視化することに成功した。これによって、ヘモサイトにおけるアクチン細胞骨格の動態のキラリティについて、今度検討することが可能となった。したがって、本年度の主要な目標を達成できたと考えている。 一方、当初の計画では、ショウジョウバエ胚由来の初代細胞培養系で細胞キラリティを検出するはずであった。しかし、すでに報告されている、初代細胞培養系を樹立する方法を用いても、効率的に初代培養系を得ることができなかった。同時に実施していた、ヘモサイトを用いる方法によって、細胞キラリティを検出することができたので、初代培養系を用いる方法を中止することとした。 当初の計画では、細胞のキラリティを、二つの異なる方法を用いて検出するはずであった。一つは、上で述べたように、中心体の移動を指標とする方法であり、これによって細胞のキラリティを検出することに成功した。二つめは、左右非対称なマイクロ・パターンで、細胞の接着基質を培養皿にコーティングし、接着の選択性を指標に、細胞キラリティを解析する方法である。平成26年度の研究におい二つめの方法も試みた。しかし、ショウジョウバエ細胞が強く接着する基質をコーティングすることが予想以上に困難で、現在、その条件を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究においては、平成26年度の研究で確立した方法を用いて、細胞キラリティの形成機構を明らかにしていく。研究代表者の研究によって、ショウジョウバエMyosin31DF(Myo31DF)がin vivo細胞キラリティを鏡像化する機能をもっていることが明らかになっている。Myo31DFは、I型ミオシン(ミオシンID)をコードしている。Myo31DF突然変異ホモ接合体では、細胞キラリティが鏡像化していることがわかっている。そこで、その蛹からヘモサイトを得て培養し、すでに確立している、中心体と核の位置を指標とした方法によって、細胞キラキティを調べる。野生型とMyo31DF突然変異ホモ接合体のヘモサイトでは、細胞キラリティが鏡像関係にあると予測される。 脊椎動物細胞において、細胞キラリティは、アクチン細胞骨格の構造や移動として検出される。平成26年度の研究によって、ショウジョウバエ蛹から得たヘモサイトのアクチン細胞骨格の挙動を、ライブ観察できるようになった。平成27年度の研究では、統計的手法を用いることで、アクチン細胞骨格の構造、動態のキラリティを検出する試みを行う。 研究代表者や、その他のグルーのこれまでの研究によって、細胞キラリティの形成には、正常なアクチン細胞骨格の機能が必要であることがわかっている。 GAL4/UASシステムを用いることで、ヘモサイトにおいて、遺伝子強制発現や、RNA干渉法によるノックダウンを容易に行うことができる。RhoファミリーGTPアーゼ、Rock、各種RhoGEFなど、色々なアクチン細胞骨格制御因子をコードする遺伝子の強制発現やノックダウンを行い、ヘモサイトの細胞キラリティへの影響を調べる。これらの結果から、細胞キラリティの形成に必要なアクチン細胞骨格制御系を明らかにしていく計画である。
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Research Products
(3 results)