2014 Fiscal Year Research-status Report
TypeIII分泌系を介した根粒菌-宿主相互作用に関与する宿主遺伝因子の解析
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26650089
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 修正 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (70370921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 貴一 京都産業大学, 総合生命科学部, 教授 (80370922)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 根粒菌-宿主相互作用 / TypeIII分泌系 / エフェクタータンパク質 / ミヤコグサ / 組換え近交系統 / ナチュラルバリエーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイズ根粒菌Bradyrhizobium elkaniiの接種により観察されたミヤコグサ実験系統間での根粒形成の表現型の差に対するB. elkaniiのTypeIII分泌系の効果を調査する目的で、TypeIII分泌系の遺伝子(rhcJ)を破壊したB. elkanii株を用いた接種実験を行なった。その結果、B. elkaniiの野生株の接種では根粒形成が認められなかったミヤコグサのB-129系統、多数の無効根粒を形成したパキスタン由来の類縁実験系統Lotus bruttiiを含め、全てのミヤコグサ実験系統において、rhcJ破壊株の接種により有効根粒が形成された。この結果から、B. elkaniiとミヤコグサの相互作用において、B. elkaniiのTypeIII分泌系により導入されるエフェクタータンパク質はミヤコグサにおける防御反応を誘導していると考えられ、ミヤコグサ実験系統間の表現型の差は、その感受性の差に起因する可能性が高いことが明らかとなった。 この、系統間差に関与するミヤコグサ遺伝子を探索する目的で、B. elkaniiの野生株の接種で根粒を形成しないB-129系統と根粒形成が認められるMG-20系統、L. bruttii間の組み合わせで作製されている組換え近交系統(RILs)を用いた接種実験を行なった。B-129 x MG-20のRILs, B-129 x L. bruttiiのRILs各10系統を用いたテスト解析で、根粒形成の有無の表現型が分離することを確認するとともに、B-129 x MG-20のRILsでは収集済の遺伝子型情報から表現型と遺伝子型が一致する候補領域が検出された。そこで、この領域に組換えを持つ10系統について優先的に解析を行い、候補領域を150kbの範囲に絞り込むことに成功した。 また、次年度実施予定であった、ミヤコグサ野生系統についてもコア系統を中心に先行解析を行い、B. elkaniiの野生株接種による表現型が、B-129型、L. bruttii型、MG-20型の3種に分類することができることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ミヤコグサRILsを用いたQTL解析に関連して、本年度ナショナルバイオリソースプロジェクトのゲノム情報整備等整備プログラムに採択され、B-129 x MG-20のRILs, B-129 x L. bruttiiのRILs各96系統のリシークエンスを実施することができ、得られた配列情報を利用して高密度のSNP遺伝子型情報を集積することができた。この遺伝子型情報を本研究のB. elkaniiの野生株接種による表現型情報と対応させることにより、B-129 x MG-20のRILsにおいて寄与率の高い遺伝子座の存在が検出され、その領域に組換えを持つ系統の選抜解析を行なうことにより、効率よく候補領域を150kbの範囲に絞り込む事ができた。 また、RILsを用いた解析を情報が得られる系統に集中して行なうことができたため、次年度に計画していたミヤコグサ野生系統を用いたナチュラルバリエーションの解析を前倒しして実施することができ、ミヤコグサ野生系統においても、実験系統で確認されたのと同様なB. elkaniiの野生株接種による表現型の系統間差を同定し、この表現型情報を用いたゲノムワイド関連解析を実施可能であることを確認することができた。 以上のことから、本研究は当初計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ミヤコグサRILsを用いたQTL解析に関しては解析を進めているB-129 x L. bruttiiのRILsの表現型情報を、ゲノム情報整備等整備プログラムで得られたリシークエンスの情報を基に整理している遺伝子型情報と対応させることにより、QTL解析を実施する。また、B-129 x MG-20のRILsを用いた解析については、解析系統を追加し、検出している候補領域の妥当性の検証を行なうと共に、候補領域に予測されている遺伝子の情報を基に候補遺伝子を検索する。候補遺伝子については、内在性のレトロトランスポゾンを用いて作製を進めているミヤコグサのタグラインの中から、候補遺伝子に挿入のある系統を選抜し、それを用いた機能解析を進められる体制を整える。 一方、ミヤコグサ野生系統を用いた解析に関しては、コア系統、サブコア系統の計58系統について、B. elkaniiの野生株接種による表現型情報を収集し、得られる表現型情報を用いて、リシークエンスにより整備を行なった各野生系統のSNP多型情報を基にしたゲノムワイド関連解析を実施する。 各解析から得られる候補遺伝子座の情報を比較することにより、根粒形成の開始に関わる遺伝子座や有効根粒の形成に関わる遺伝子座についての情報を整理し、遺伝子機能解析に向けた基盤を整備するとともに、得られた結果を取りまとめ、成果発表を行なう。
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Causes of Carryover |
本年度途中に、ナショナルバイオリソースプロジェクトのゲノム情報整備等整備プログラムに採択されたため、使用費目として本研究と重複する植物栽培関係の消耗品費の支出をおさえることができ、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費の支出をおさえることで生じた次年度使用額については、ゲノム情報整備等整備プログラムの結果から得られた情報を用いる事に促進されたQTL解析からの候補遺伝子の機能解析を進める上で必要となるキット等の消耗品費として使用する計画である。
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[Journal Article] Lotus japonicus cytokinin receptors work partially redundantly to mediate nodule formation2014
Author(s)
Held M, Hou H, Miri M, Huynh C, Ross L, Hossain MS, Sato S, Tabata S, Perry J, Wang TL, Szczyglowski K.
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Journal Title
Plant Cell
Volume: 26
Pages: 678-694
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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