2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26650092
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小関 良宏 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50185592)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | トリコトミン / クサギ / インドールアルカロイド / N-グルコシルトランスフェラーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
青色色素であるトリコトミンはクサギ (臭木) の実に蓄積されるインドールアルカロイド化合物であり、これまでに化学合成法は確立されているものの生合成経路やその合成酵素遺伝子は未同定のままである。そのため本研究ではトリコトミンを高生産する未分化誘導細胞 (カルス) を使用してトリコトミンの合成酵素遺伝子の同定およびその合成経路を解明することを目的として研究を進めている。トリコトミンはトリプトファンを出発物質として合成されるインドールアルカロイド化合物であり、bis-(indole) alkaloid 構造をとっている。この構造に窒素結合によりグルコースが 1 つ配糖化されたものを Trichotomin G1、2 つ配糖化されたものを N-N’-di(glucosyl) trichotomin としており、クサギの実およびカルスでは配糖化された構造のトリコトミンが多く蓄積していることを確認した。次にクサギの実より抽出した total RNA をもとに次世代シーケンス解析を行い、得られた配列データから他のトリプトファン代謝遺伝子から関連が示唆される遺伝子を 12 遺伝子獲得した。またカルス中にトリコトミン以外に黄色に呈色する物質が多量に蓄積していることが確認できたことから単離精製し、分子量を測定した結果、クサギの葉に蓄積が確認されているアクテオシドであることが推定された。このアクテオシドはフェニルアラニンから合成されることが予想されるためトリコトミンの前駆物質ではないことが確認できた。今後は獲得された遺伝子のうちトリコトミンへの N-グルコシルトランスフェラーゼを担う酵素遺伝子を始めに単離することを目指して研究を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究室ではクサギの実から作製した恒常的にトリコトミンを生合成する培養細胞を所持しているため、この培養細胞およびクサギ植物体を実験材料として使用した。初めに網羅的な mRNA 解析を行うにあたり、培養細胞の遺伝子と植物体での遺伝子に違いがないことを確認するためハウスキーピング遺伝子やいくつかの配糖化酵素遺伝子をそれぞれから単離し遺伝子配列を比較した。その結果、培養細胞では該当遺伝子とそれに類似した数塩基違いの配列が複数単離されることがあり、継代培養により培養変異が起こっていることが考えられた。このため、網羅的 mRNA 解析を行うための total RNA をクサギ植物体の実から抽出して行った。次世代シーケンスによる 2,000 万リード解析の結果、平均配列長が 1,300 bp 程度、コンティグ数が約 65,000 の mRNA 配列が得られた。トリコトミンの構造は窒素結合によりグルコースが配糖化されていることから、まず、次世代シーケンスデータからの N-glucoyltransferase (NGT) 遺伝子の抽出を行った。その結果、NGT 相同配列は 6 遺伝子が確認され、他植物体で NGT 活性が確認されている、UGT72、UGT76、UGT85 ファミリーに属する遺伝子が一つずつ見つかった。またトリコトミンはトリプトファンを出発物質とするインドールアルカロイド化合物であることから、同様にトリプトファンを出発物質とするインドール3-酢酸などと経路を共有していることが考えられたため、既に報告されている関連酵素遺伝子の抽出を行った。その結果、tryptophan decarboxylase は 3 遺伝子、tryptophan aminotransferase は 1 遺伝子、flavin-containing monooxygenase は 2 遺伝子が確認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
トリプトファン代謝経路において上流で機能することが報告されている酵素遺伝子はトリコトミンの合成以外に他の合成経路においても共通して機能している可能性があるため、まずはトリコトミンの配糖化酵素遺伝子と推定される NGT 遺伝子の単離及び同定から研究を進める。NGT 遺伝子についてはクサギの実より抽出した RNA から合成した cDNA から全長配列を単離し、大腸菌異種発現用ベクターに導入している。基質としては非配糖体であるトリコトミンとグルコースが 1 分子配糖化された Trichotomin G1 が細胞中に存在していることから、配糖化反応はトリコトミンが合成された後にトリコトミンを基質として反応していることが推定されるため、非配糖体であるトリコトミンを培養細胞から単離精製して用いる。細胞中には配糖化された構造の割合が多いため培養細胞の量を増やしてトリコトミンの単離を進めている。またトリコトミン配糖体である Trichotomin G1 と N-N’-di(glucosyl) trichotomin を酸処理や熱処理などで糖を脱離できる条件を探している。細胞からの粗酵素や組み換え酵素では活性検出が難しいことも考えられることから候補遺伝子を RNAi によりノックダウンした形質転換体の作出も同時に行う。またカルスの培養変異によりトリコトミンの生産量が低下した白い細胞が見られたため、この細胞を増殖させネガティブコントロールとして使用することでも代謝経路の解析を進める予定である。一般的に同じ代謝経路の遺伝子群の発現は同調していることが多いので、トリコトミン配糖化酵素遺伝子を同定した後には、この遺伝子の発現に変動が見られる条件を検討し、その条件で同様な発現の変動が示される他のトリプトファン代謝酵素の候補遺伝子を選別することでトリコトミン生合成経路の解明に臨む。
|
Research Products
(1 results)