2014 Fiscal Year Research-status Report
植物感染性線虫を用いた分子遺伝学的研究手法の確立と展開
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26650102
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
澤 進一郎 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (00315748)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サツマイモネコブセンチュウ / 誘引物質 / 巨大細胞 / センチュウ感染 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、植物感染性線虫を用いた分子遺伝学的研究手法の確立と展開を行っている。特に、線虫感染過程における、①植物細胞の脱分化、多核化、再分化過程における分子機構と②線虫誘因・忌避物質に焦点を当て、その分子機構の全体像を明らかにし、植物遺伝子の新たな機能に関する知見を得ることを目的としている。 まず、植物細胞の脱分化、多核化、再分化過程における分子機構の解明を行う為に、センチュウ感染時の巨大細胞形成過程において、どのような遺伝子群が発現しているか、明らかにするために、RNA seq解析を行った。センチュウ感染後3,5,7日後の植物の根からRNAを回収し、植物とセンチュウの両方のcDNA情報を得た。このことにより、どのような遺伝子群が、巨大細胞発達時に機能するか、その指標が出来た。 さらに、サツマイモネコブセンチュウからCLE遺伝子を5つ単離した。これらについて、植物で過剰発現を行ったが、異常な表現型はしめさなかった。しかし、RT-PCRにより、センチュウ内での発現は確認できたことから、植物内でセンチュウCLE遺伝子のRNAi株を作成しているところである。 また、センチュウ感染過程に関わるその他のエフェクター因子として、MSP7, MJD15の解析を続けている。これらの相互作用因子を単離し、個別解析を行っている。 次に、線虫誘引物質の探索を行った。その結果、シロイヌナズナの種子ムシゲルが誘引活性に必要なこと、ムシゲル内のグルコマンナンが、その誘引活性に必要な物質であることを示唆した。また、エンドウマメの根抽出物にセンチュウ集合促進活性を見いだした。現在、その精製を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、大きく二つの研究を展開している。(1)センチュウ感染過程の分子機構の解析と(2)線虫誘引物質の探索である。(1)では、センチュウのCLE遺伝子に関する機能解析を行った。現在までにその機能は明らかになっていないが、RNAiを用いた解析を継続中である。また、エフェクタータンパク質のMJD15がMAPKKKと相互作用することを明らかにした。現在、MJD15が、ANP1-MKK6-MPK4経路を遮断することで、植物のデフェンス機能を抑制し、センチュウ感染を有利にするというモデルを構築し、それに関する解析準備を整えることが出来た。また、MSP7においても、相互作用因子として転写因子を同定し、現在、その機能解析を行っている。また、大きな進展が見られたのは、線虫誘引物質である。グルコマンナンの合成突然変異体では誘引活性が見られないこと、合成グルコマンナンに誘引活性が見られることなど、多くの知見を得ることが出来た。また、根抽出物に含まれるセンチュウ集積誘導物質の精製も進んでおり、単離が期待できる。このようなことから、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、昨年度の研究を継続して行う。特にCLE 遺伝子のRNAi株ができることから、そのセンチュウ感染抵抗性を評価したい。その他のエフェクタータンパク質の作用機構に関しても、その詳細な分子機構の同定を目指す。また、グルコマンナンに関しても、論文投稿に向け、データ集積を急ぐ。さらに、エンドウマメの根抽出物では、NMRの結果から、糖か糖脂質が候補として考えられている。この性性をすすめ、化合物の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
26年度には、シロイヌナズナのネコブを用いたRNA seqを予定していたが、シロイヌナズナの根の切片作成がきわめて困難であることが判明した。このため、当該RNA seqを行うことが出来なかった。このため、RNA seqに関わる予算を消化出来なかった。しかし、ダイズを用いたネコブにより、当該実験が可能であることが判明したので、研究におくれは生じていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、CLE 遺伝子のRNAi株ができることから、そのセンチュウ感染抵抗性を評価したい。その他のエフェクタータンパク質の作用機構に関しても、その詳細な分子機構の同定を目指す。また、グルコマンナンに関しても、論文投稿に向け、データ集積を急ぐ。さらに、エンドウマメの根抽出物では、NMRの結果から、糖か糖脂質が候補として考えられている。この性性をすすめ、化合物の同定を目指す。さらに、昨年度できなかったネコブを用いたRNA seqに関して、ダイズを実験材料として行う。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Protocol of root-knot nematode culture by hydroponic system and nematode inoculation to Arabidopsis2015
Author(s)
Nishiyama, H., Ngan, B. T., Nagakami, S., Ejima, C., Ishida, T., and Sawa, S
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Journal Title
Nematological Res.
Volume: In press
Pages: in press
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Light-dependent green gall formation induced by Meloidogyne incognita2014
Author(s)
Nishiyama, H., Nakagami, S., Todaka, A., Arita, T., Ishida, T., and Sawa, S.
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Journal Title
Nematology
Volume: 16
Pages: 889-893
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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