2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26650115
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青沼 仁志 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20333643)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝子改変 / 昆虫 / 配偶行動 / クロコオロギ / 生体アミン / 動機付け |
Outline of Annual Research Achievements |
雌コオロギによる配偶者選択の神経基盤を調べることをとおして,適応的な行動スイッチングの神経生理機構を理解する目的で研究を進めている.雌は,雄の誘因歌とそれに続く求愛歌で配偶行動が誘発される.雄の発音によって雌の脳の生理状態が変容し,その際,生体アミンにより行動閾値が修飾されると考えている.そこで,コオロギの脳内アミンの修飾機能を任意に操作し,配偶者選択の神経基盤を調べるために,新奇遺伝子導入法の開発に取り組んでいる. まず,組替え酵素(φC31 integrase)を用いた遺伝子導入コオロギ作成法の確立を進めた.piggyBac transposon をもちいて作成した組替え標的部位 (attP1-3xP3-EYFP-attP2 [複眼で黄緑色蛍光タンパク質 EYFP を発現する遺伝子組み換え系統])を累代飼育・選抜し,繁殖力に優れた系統を8系統選抜した(attP 系統).attP 系統に対し,受精卵・初期胚内で φC31 integrase による配列特異的組み替えが起こるかを検討する目的で,野生型φC31 integrase mRNA,codon-optimized φC31 integrase mRNA を attB1-3xP3-mCherry-attB2 配列を含むプラスミド DNA とともに受精卵に顕微微量注入した.組替えが成功した個体ではattP-attB 配列間の組替えにより 3xP3-EYFP 発現カセットが 3xP3-mCherry 発現カセットに置き換わる.その結果,複眼で赤色蛍光タンパク質 mCherry を発現する個体が生じる.今年度は,この実験系による組替えの効率評価実験を複数回遂行したが, 組替えが成功したコオロギを得ることができなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では,コオロギのように非モデル動物として扱われる実験動物でも遺伝子導入が容易にてできるようにするための新奇技術開発にチャレンジしている.そのため,若干の予想していなかった問題点も出てきたが,そのための方策は,今後の研究の推進方策等で述べる. 当初予定が順調には進んでいないが,その最大の理由は,コオロギに感染するウィルスが飼育室のコオロギに拡散し,実験に必要な個体数を十分に確保できなかったためである.本来,外部から他の個体が入らないように飼育していたのだが,実験動物施設で他の研究室で飼育しているゴキブリ(Periplaneta americana)が逃げ出し,飼育室で繁殖したのと同時にウィルスが拡散したので,ゴキブリによる被害が一因と考えられる.26年度は飼育施設と協力し,ゴキブリの侵入を防ぐ方策を進めたので,27年度からは十分な実験個体が確保できるので,順調に研究は進められると期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
配偶者選択の神経基盤を調べるにあたり,本研究では,遺伝子改変個体を作成し,脳内生体アミンの修飾作用を任意に操作できるようにすることが第一の目的なので,以下の計画により遺伝子導入法の開発を進める. 組替えによる遺伝子導入の効率評価実験で組替えが成功した個体を得ることができなかった原因として,受精卵内で組替えに十分な量の φC31 integrase タンパク質を合成させることができなかったことが考えられる.26年度は野生型φC31 integrase,codon-optimized φC31 integrase の mRNA を用いたが,本年度はφC31 integrase 遺伝子を持つプラスミドDNAよりφC31 integrase mRNA を受精卵内で合成させる実験系を立ち上げる.φC31 integrase 遺伝子は ハウスキーピング遺伝子である beta-actin 遺伝子の転写調節領域を用いて転写させる.beta-actin 遺伝子の転写調節領域については26年度までに ~2 kbp 程度の領域を配列決定済みである.さらにより強い組替え活性を持つ変異型 φC31 integrase を用いることで組替え効率を向上させる.現在,変異型 φC31 integrase の発現ベクターを構築している
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Causes of Carryover |
動物飼育施設で昆虫に感染するウィルスが拡散する被害にあい,実験対象のクロコオロギが多数死滅してしまったため,実験に必要な個体数のコオロギが十分確保できず研究が遅れてしまった.そのため,昆虫の飼育に必要な経費や実験に必要な消耗品などの経費を次年度に回した.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の遅れを取り戻すため,実験を共同で進めてくれる研究員を週3日雇用し研究を進める.
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Research Products
(7 results)