2015 Fiscal Year Research-status Report
複眼進化研究の新機軸:視細胞のdeep homology
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26650117
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
蟻川 謙太郎 総合研究大学院大学, その他の研究科, 教授 (20167232)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 複眼 / 視細胞 / 進化 / 発生 / ショウジョウバエ / チョウ類 / 調節因子 / 国際研究者交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、複眼の進化研究に視細胞のdeep homologyを新機軸として加えて感桿構造の多様性を評価、視覚系の進化に関する理解を深めることを目的とした、ユニークな試みである。ショウジョウバエ複眼を構成する個眼には視細胞が8個含まれるが、アゲハ個眼ではこれが9個になっている。形態から判断するかぎり、アゲハではショウジョウバエのR7が重複して2つになっているものと考えられる。 そこで、ショウジョウバエでR7に特異的に発現するprospero、spineless、R7とR8に発現するspaltに着目、アゲハ5日蛹の複眼原基で免疫組織化学を行った。結果、1個眼あたり3個のspalt発現細胞があり、うち2個はprosperoを共発現していた。prosperoを発現するこの2個がショウジョウバエR7に相同な視細胞と考えられる。これらの細胞にはspinelessも発現していた。ただし、spinelessの発現パターンは個眼によって異なり、発現細胞の数が2個、1個、0個の3パターンがあった。これはアゲハ成虫複眼に見られる3タイプの個眼に対応すると考えられる。 さらに、アゲハでspineless遺伝子を除去する遺伝子編集(CRISPR-Cas9)を行った。その結果、spineless-の個体では個眼の多様性が消失した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
チョウ類でCRISPR-Cas9による遺伝子編集に成功し、複眼における個眼多様性を決める分子機構の一端が明らかになった。これは当初の計画にはなかった成果である。 昨年のJSPS外国人特別研究員フェローシップに続き、Mike Perry博士が自らアメリカでグラントを獲得し、3週間の日程で来日、遺伝子編集実験に集中して取り組んだ。その後、緊密に連絡をとりながら日米それぞれの研究室で活発に研究を行った結果、本研究は当初の計画以上に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
いま投稿中の論文を今年度中に出版すべく、作業を進める。 個眼多様性の機能をさぐるため、spineless遺伝子を除去した個体と正常個体において、視覚第一次中枢における神経回路構造を比較する組織学実験を進める。
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Causes of Carryover |
海外研究協力者を2ヶ月招聘する予定だったが、都合で3週間に短縮されたこと、海外研究協力者自身がグラントを獲得し、こちらが航空運賃を負担する必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
顕微鏡画像の解析のために、研究補助者を雇用する経費として使用する予定。
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