2014 Fiscal Year Research-status Report
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26650118
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
沼田 英治 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70172749)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 昆虫 / 時間生物学 / 概日リズム / 真社会性 / 亜社会性 / 親子関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
【トビイロケアリ】婚姻飛行後、女王が単独でコロニーを創設するトビイロケアリにおいて、婚姻飛行時に女王を採集して、実験室で歩行活動を記録した。未交尾で翅をつけている女王は明暗サイクルに同調し恒常条件下で自由継続する明瞭な概日リズムを示したが、既交尾で翅を落とした女王は明暗サイクル下でも恒常条件下でも明瞭なリズムを示さず1日中活動をする傾向にあった。しかし、このようにしてコロニーをつくった女王を十分な日数が経過してからコロニーから取り出すと半数近くが自由継続リズムと明暗サイクルへの同調性を示した。したがって、交尾後女王の活動に周期性が見られなくなったのは、概日リズムという機構を喪失したのではなく、女王のみが卵や幼虫の世話をするときには1日中はたらかなければならないことによるマスキング効果であると推定された。また、ワーカーと女王の活動を別々に記録できる装置を完成させた。 【タガメ】業者より購入したタガメを用いて、父親による保護行動と卵の孵化リズムの関係を調べた。父親の保護行動が概日リズムの支配下にあり、夜間に卵塊に水を供給していることがわかっていた。そこで、人工的に決まった時間にだけ給水する装置を作製し、父親から隔離した卵塊に対して明期のみまたは暗期のみ給水を行った。その結果人工給水の時間によって孵化時刻が若干ずれる結果が得られた。しかし、明暗サイクルの影響を強く受けていることから、父親の行動がどのくらい孵化時刻に影響しているのかはさらに検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【トビイロケアリ】既交尾女王においては活動の周期性がほとんど失われていることが明らかになったので、ワーカーが時刻情報を女王に伝えるかどうかという実験には、周期性を回復した女王を使う必要があることがわかった。それがわかったのが遅い時期であったためにワーカーと女王の活動を別々に記録できる装置を効率的に使うことができず、実験はやや遅れ気味である。 【タガメ】実験室でのアクシデントによってタガメが大量に死んだことによりかなりの実験が無効になってしまい、年間一世代の昆虫で秋には休眠に入るために、これを回復できなかった。そのために今年度の実験結果が少ない。
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Strategy for Future Research Activity |
【トビイロケアリ】女王がリズムを回復する条件が明らかになり、ワーカーと女王の活動を別々に記録できる装置が完成したので、今後は計画通り進めることが可能になった。研究協力者として実験の主力であった大学院生が就職したが、連携研究者の中村圭司とその研究室の学生に協力してもらうことが決まっている。 【タガメ】今年度はアクシデントに注意して実験を遂行するばかりではなく、高温・長日条件で休眠を回避させて、野外の繁殖シーズン以外にも繁殖させるようにして実験期間を長くする予定である。
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Causes of Carryover |
予期せぬアクシデント等によって、実験の進行がやや遅れており、その結果として「物品費」がかなり残ってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
連携研究者との共同研究を推進するために、活動リズム記録装置を追加で作製し、研究打ち合わせを緊密に行う。そのために「旅費」と「物品費」を本来の2年目の予定額よりも多く使用して、実験の後れを取り戻す。
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Research Products
(2 results)