2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26650132
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
遊佐 陽一 奈良女子大学, 自然科学系, 教授 (60355641)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 動物 / 光合成 / 盗葉緑体 / 進化 / 適応的意義 |
Outline of Annual Research Achievements |
嚢舌類に属するウミウシは,餌の藻類から葉緑体を細胞内に取り込み,光合成に利用する(盗葉緑体現象)。本課題では,嚢舌類の系統樹を描き,それぞれの種が利用する餌の質や量や生息地での光量などの生態的特性,および光合成能維持期間を系統樹上にプロットし,祖先形質の推定と系統的比較法によって,盗葉緑体能の獲得と光合成能の長期維持に関与した要因についての仮説を検証する。 今年度は,(1)野外における採集と環境要因の測定,(2)室内における光合成能維持期間と餌の質の測定,(3)系統樹作成,の一部を行った。 まず,(1)国内で嚢舌類が多く観察されている沖縄本島,鹿児島市,和歌山県白浜町,佐渡島などで嚢舌類とその食藻の定量採集を行った。同時に,現地で光量などの環境要因も測定した。次に,(2)野外で採集された嚢舌類と食藻を速やかに本学に持ち帰り,嚢舌類の光合成能維持期間や食藻の質(灰分量)のデータを得た。さらに,(3)嚢舌類28種からDNAを抽出し,ミトコンドリアCOIと16S rDNA遺伝子の塩基配列を,定法に従い決定した。 得られた塩基配列を元に系統樹を描き,嚢舌類の進化過程を推定し,さらにその系統樹上に,盗葉緑体能と生態的特性とをマッピングした。その結果,本研究で採集した嚢舌類の中で盗葉緑体能を持つ種のすべてがゴクラクミドリガイ上科に属していた。系統的比較法を用いて予備的に解析してみた結果,調査した生態的要因が盗葉緑体能の進化に影響しているという証拠は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外・室内調査や塩基配列の決定は予定通り進捗している。系統的比較法の検討も行い,本手法で解析が可能であることを確認した。ただし,予備的解析の結果,盗葉緑体能の進化に関わる生態的要因が特定出来ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点で盗葉緑体能の進化に関わる生態的要因が特定出来ていない理由として,種数が十分でないこと,1ヶ月以上葉緑体を維持できる長期保持種が1種しか解析に含まれていないことが挙げられる。よって,より多くの種を解析に含める必要がある。特に,長期維持種は他に世界で4種報告されているため,今後はそれらの種をターゲットとして海外を視野に入れて調査を行う必要がある。また,国内で維持期間の報告がない種についても調査を進め,新たな長期維持種の探索も行う必要がある。
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Research Products
(3 results)