2014 Fiscal Year Research-status Report
蛋白質に断続的に働いた正の自然選択を検出する方法の開発と応用
Project/Area Number |
26650134
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
鈴木 善幸 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 教授 (70353430)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子進化 / 自然選択 / 同義置換 / 非同義置換 / インフルエンザウイルス / ヘマグルチニン / 免疫逃避 / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題を遂行するにあたり、平成26年度における研究実施計画としてはおもに、蛋白質の進化の過程で断続的にあるいは一度だけ生じた正の自然選択を検出できる方法の理論を確立し、蛋白質をコードする塩基配列の比較から断続的なあるいは一度だけ生じた正の自然選択を検出できるコンピューター・プログラムを完成させる、ということであった。そこで、平成26年度においては、任意の蛋白質をコードする複数の塩基配列をもちいて作成された系統樹において、特定の枝で起こったと推測されるアミノ酸置換に着目し、そのアミノ酸置換に正の自然選択が働いたかどうかを統計的に検定する方法を考案した。その方法は、系統樹において目的のアミノ酸置換よりも後の枝において、逆向きのアミノ酸置換を生じさせる非同義置換速度と同義置換速度を統計的に比較し、非同義置換速度が同義置換速度よりも遅いことを検出することで逆向きのアミノ酸置換に負の自然選択が働いていることを示すことにより、間接的に目的のアミノ酸置換に働いた正の自然選択を検出するという方法であり、C言語をもちいてこの方法を実装したコンピューター・プログラムを作成した。従来の正の自然選択検出法においては、非同義置換数が同義置換数よりも統計的に有意に多く観察されたときにのみ正の自然選択が検出されるため正の自然選択を検出するためには多くの非同義置換が生じていることが必要であったが、新しい方法では非同義置換数が同義置換数よりも少ない場合に正の自然選択が検出されるため非同義置換数が少なければ少ないほど正の自然選択を検出しやすくなり従来の方法よりも適用範囲が格段に広がると考えられる。また、生物学的に極めて興味深い革新的な機能や構造の創出の多くは進化の過程で一度あるいは少数回しか生じていないと考えられるが、新しい方法によりこれらに働いた正の自然選択も検出することができるようになると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を遂行するにあたり、平成26年度における研究実施計画としてはおもに、蛋白質の進化の過程で断続的にあるいは一度だけ生じた正の自然選択を検出できる方法の理論を確立し、蛋白質をコードする塩基配列の比較から断続的なあるいは一度だけ生じた正の自然選択を検出できるコンピューター・プログラムを完成させる、ということであったが、平成26年度においては、任意の蛋白質をコードする複数の塩基配列をもちいて作成された系統樹において、特定の枝で起こったアミノ酸置換に着目し、そのアミノ酸置換に正の自然選択が働いたかどうかを統計的に検定するために、系統樹において目的のアミノ酸置換よりも後の枝において、逆向きのアミノ酸置換を生じさせる非同義置換速度と同義置換速度を統計的に比較し、非同義置換速度が同義置換速度よりも遅いことを検出することで逆向きのアミノ酸置換に負の自然選択が働いていることを示すことにより、間接的に目的のアミノ酸置換に働いた正の自然選択を検出するという方法を考案し、C言語をもちいてその方法を実装したコンピューター・プログラムを作成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に作成された、蛋白質の進化の過程で断続的にあるいは一度だけ生じた正の自然選択を検出できる方法をC言語をもちいて実装したコンピューター・プログラムをもちいて、H3N2亜型ヒトインフルエンザウイルスの進化において興味深い観察事象である、ヘマグルチニン蛋白質におけるN-結合型糖鎖付着部位の増加の生物学的意義について研究する。N-結合型糖鎖は、実験的に抗体のヘマグルチニン蛋白質への結合を阻害することが示されているが、同時にヘマグルチニンのシアル酸受容体への結合も阻害してしまうことも示されており、N-結合型糖鎖付着部位の増加が正の自然選択によるものなのか突然変異パターンの変化による中立なものなのか不明であった。この問題を解決するために、本研究課題において平成26年度に考案された方法ならびにその方法をC言語をもちいて実装したコンピューター・プログラムを応用する。
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Research Products
(5 results)