2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞外DNAを取り込む極限環境微生物から探る遺伝子伝播
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26650140
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
柳川 勝紀 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 学術研究員 (50599678)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 進化 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
陸上温泉や深海熱水噴出孔といった極限環境は,高温かつ高重金属濃度であることが知られている.この物理化学的特徴は,外来DNAが微生物細胞内に取り込まれやすい条件と一致する点が多い.そこで,本研究では微生物による細胞外DNAの取り込み能力に着目し,自然環境で潜在的に起こる形質転換について調査を行った.今年度は,実験系の確立と本研究提案に適した陸上温泉試料の選定を行った.微生物による細胞外DNAの取り込み能の評価として,蛍光分子ラベルしたDNAを取り込んだ微生物細胞をフローサイトメーターで検出・計数する方法が有効であった.実験試料の採取は,様々な泉質(化学的特徴)と温度を示す陸上温泉で実施した.国内では鹿児島(安楽温泉,霧島温泉,塩浸温泉),大分(岳の湯,赤川温泉,ガニ湯,郷の湯)から,国外ではインドネシアのスマトラ島(Sipoholon,Dolok Tinggi Raja)から,炭酸泉,硫黄泉,冷泉,高濃度の鉄分を含む温泉から実験試料を得た.高温硫黄泉は全微生物細胞数が比較的高いものが多いが,分子系統解析からすると多様性は低く,硫黄酸化細菌が優占していた.これらの試料を用いた細胞外DNA取り込み実験では,有意な取り込みが観察されなかった.一方,低温の試料の一部では,細胞外DNAの取り込みと見られるシグナルがわずかに観察された.現在,様々な条件下での検討を実施し,DNAの取り込みに影響を与える因子を調べている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属変更に伴い,利用できる研究施設に変更が生じた.このため,放射性同位元素を用いた実験が実施できなかったものの,別の実験装置を使用することで,研究計画と大きな相違を生むことなく研究を進めることができた.この為,概ね順調に計画は達成できていると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
細胞外DNAの取り込み速度に影響を与える因子として,細胞外DNAの塩基数や形態が考えられる.また,温度や重金属濃度などの物理化学因子が与える影響についても検討する.さらに,放射性同位体トレーサーを用いた細胞外DNAの取り込み評価も平行して実施し,多角的に実験結果の意味することを検討したい.
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Causes of Carryover |
所属変更に伴い,放射性同位元素を用いた実験計画に変更が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
放射性同位体標識オリゴヌクレオチドを使った細胞外DNA取り込み速度を測定する実験方法に代替案を確立することができたので,次年度はこの方法を使って,検証実験を進めていく.なお,一部の試料では放射性同位体元素を使った実験も併用し,実験結果を多角的に検証し,考察を深めていく.
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