2014 Fiscal Year Research-status Report
大規模DNAバーコーディングで食物網解析を革新する
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26650144
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
東樹 宏和 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (60585024)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 食物網 / 群集生態学 / DNAバーコーディング |
Outline of Annual Research Achievements |
生物種間の食うー食われる関係(食物網)に関する野外研究は、生物群集の動態に関する理論の発展において中心的な役割を担ってきた。しかし、従来の食物網研究では、野外で起こる捕食ー被食関係の中で、肉眼観察な相互作用に対象が限定されがちであった。本研究では、従来の研究法では食物網構造の詳細な研究が不可能であった土壌中の節足動物群集に着目し、大規模DNAバーコーディングを基に網羅的に食物網構造を解明する新手法を確立することを目指している。 今年度の研究によって、次世代シーケンサーMiSeq(イルミナ社)での大規模並列DNAバーコーディング技術を確立することができ、1500サンプルを1回のランで分析できるようになった。また、バイオインフォマティクス処理の工程について最適化を進め、MiSeqが出力する膨大なデータ(2000万リード)を高速かつ正確に情報処理することが可能になった。野外での節足動物の採集法についても、最適化をはかり、サンプリングにおける時間コストが削減された。 以上の技術基盤の整備により、これまで肉眼で観察できなかった微小生物どうしの相互作用ネットワークが簡便に解明できる体制が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はこれまでにロシュ社の454系次世代シーケンサーを基に、大規模並列バーコーディング(メタバーコーディング)の解析基盤を整備していた。しかし、454系シーケンサーはすでに試薬の販売が停止されることが決定されており、また、データの正確性の面でも、データ量の面でも、より新しい次世代シーケンサーへの乗り換えが好ましい状況であった。こうした観点から、塩基配列決定精度がはるかに高く、また、アウトプットデータが100倍に及ぶイルミナ社次世代シーケンサーへの移行を進めた。DNA実験とバイオインフォマティクスの両面で様々な試行錯誤を要したが、最終的にイルミナ社MiSeqシーケンサーを基盤とした一連のプロトコルの作成に成功した。 この解析プラットフォームの刷新により、非常に正確かつハイスループットなメタバーコーディングが行えるようになった。本研究が目指している地下・地表の節足動物間の食物網構造の解明だけでなく、幅広い生物間相互作用ネットワークの解析に利用することが将来的に可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のメタバーコーディング技術を用いて、地下・地表の節足動物間の相互作用解析を進める。野外において定期的にクモを始めとする地表徘徊性節足動物を採取し(1回のサンプリングで数百個体)、同定の後、DNA抽出を行う。各個体について、ミトコンドリアCOI領域や各18S配列をターゲットとしたPCR増幅を行い、シーケンスの際に使用するサンプル識別タグ配列を付加する。タグ付けのあと、次世代シーケンサーMiSeqによるランを行い、1回のランにつき2000万リードほどの配列を得る。これを先行プロジェクトで開発し、26年度に最適化が施された解析プログラムClaidentを用いてアセンブルし、QCauto法による自動生物同定にかける。 この一連の解析で得られたデータをもとに、各時間断面における食物網構造を明らかにする。その上で、季節が進むに連れてこの食物網構造がどのように変化していくのか、ネットワーク構造の変遷の観点から群集生態学的に解析する。
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Causes of Carryover |
円安の影響で試薬の価格上昇が続いており、次年度に本格化するDNAバーコーディング解析に備えて今年度の試薬の使用を節約した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬の価格上昇分を次年度使用額で賄いつつ、DNAバーコーディング解析を進める。
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