2015 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノムワイド解析で解き明かす浅海性魚類の系統地理仮説―大東諸島回廊仮説の検証
Project/Area Number |
26650149
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
千葉 悟 独立行政法人国立科学博物館, 分子生物多様性研究資料センター, 特定非常勤研究員 (80599431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗岩 薫 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 短時間非常勤研究員 (50470026)
谷藤 吾朗 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 特任助教 (70438480)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生物系統地理 / 魚類相 / ddRAD / SNP / 分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では南日本の浅海性魚類相の形成史を明らかにすることを目的とし,「大東諸島回廊仮説」をゲノムワイド解析によって検証しようとするものである. 昨年度の大東諸島での調査に続き,今年度は小笠原諸島沿岸において浅海性魚類の採集調査をおこない,146種の浅海性魚類の採集に成功した.本研究課題のメインターゲットであるユウゼンとコガネヤッコについて,解析に必要な数の標本を小笠原諸島と大東諸島から得ることができた.これまでの採集調査によって,ユウゼンは分布域のほぼ全域から,コガネヤッコは国内の分布域ほぼ全域から標本を収集することができた. これらの標本からDNAを抽出し,ddRADライブラリを作製して次世代シーケンサーによるSNP探索と遺伝子型の決定をおこなった.デスクトップ型次世代シーケンサーによる一回の解析によって,ユウゼン93個体のライブラリから約1960万リードのシーケンスが得られた.個体あたり6万リード以下,または平均Depth8以下の個体を除いたところ,個体あたり17.9万リード,平均Depth 15.2で,81個体2278 SNPsの遺伝子型を決定することに成功した.コガネヤッコのライブラリも,これまでに行った予備的な解析の結果からおおむね順調に完成している.以上のことから,浅海性魚類においてデスクトップ型シーケンサーをもちいた多個体のゲノムワイド解析の実験条件が明確になり,小規模な研究室でも実施可能な系統地理研究におけるゲノムワイド解析の基盤が整った. これまでに得られたユウゼンのSNPデータセットに基づき集団遺伝学的解析をおこなったところ,ユウゼンの分布域全体での高度な遺伝子流動が検出され,大東諸島と伊豆・小笠原諸島の間で分散が生じていることが示唆された.今後,他の魚種でも同様の解析を実施し「大東諸島回廊仮説」の検証をおこないたい.
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