2014 Fiscal Year Research-status Report
水生動物がアミノ酸を飲む -見落とされていた窒素循環プロセスの解明-
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26650152
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岸田 治 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (00545626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 真 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (60719798)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 溶存有機物 / アミノ酸 / 脊椎動物 / 成長 / 表現型可塑性 / 両生類 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.エゾサンショウウオ孵化幼生に対する溶存アミノ酸の成長促進効果の探索 本研究では、溶存アミノ酸が水生脊椎動物の成長に影響するかを調べた。8種のアミノ酸(チロシン,フェルアラニン,リシン,セリン,トレオニン,グリシン,アラニン,プロリン)を0.0mM,0.5mM,1.0mMの濃度になるよう調整した溶液中(水自体は事前に濾過、煮沸し、微生物以外の生物を含まない)で、エゾサンショウウオの孵化直後の幼生を8日間飼育し成長を比較した。5種類のアミノ酸(リシン, トレオニン, セリン, フェニ ルアラニン, チロシン)で顕著な成長促進効果がみられた。一方、アラニン, プロリン, グリシンで飼育した場合でも、有意差はみられないものの成長速度の平均値はアミノ酸非添加の場合よりも高かった、この事実は、これらのアミノ酸も幼生の成長を阻害しないことを意味する。また、高濃度のときに高い成長促進効果を発揮するアミノ酸(アラニン, セリン, チロシン)はあったが、高濃度で成長を阻害するアミノ酸はなかった。アミノ酸の種類によって効果の大きさに違いがみられるが、本研究の結果は、概して、「高濃度のアミノ酸はサンショウウオ幼生の成長を促進させる効果をもつ」ことを示す。 2.卵由来の溶存有機物によるサンショウウオ孵化幼生の成長への影響 自然の池ではエゾサンショウウオが孵化した直後には同種やエゾアカガエルの卵の残骸が多く存在する。これらが溶存有機物の供給体となり、エゾサンショウウオ孵化幼生の成長に影響すると期待した。この仮説を検証するために、エゾサンショウウオやエゾアカガエルの卵の残骸をたくさん含む自然池とそれらを含まない池の水を使ってサンショウウオの孵化幼生を飼育し成長を比較した。仮説は支持されず、卵が多くあった池水と卵を含まない池水との間で、成長に対する有意な違いは認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、脊椎動物は下位の栄養段階にある動物を食うか、卵黄など親由来の栄養物を利用して成長すると考えられてきた。本研究は、溶存アミノ酸が脊椎動物の成長促進効果を持つことを示した初めての研究として評価に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度、溶存アミノ酸がエゾサンショウウオの孵化幼生に対して成長促進効果をもつことがわかったが、どれほどの濃度があれば効果があるのかや、メカニズムについては明らかではない。今後は、効果をもつ濃度レベルを探索するとともに、アミノ酸由来の窒素分がエゾサンショウウオの体内に取り込まれているのか標識アミノ酸(15N)などを用いて調べる予定である。さらに自然界において溶存アミノ酸の効果が生じる生態学的な文脈についても探索していきたい。
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Causes of Carryover |
年度内に学会発表および論文校閲費用で支出する予定だったが、学会発表についてはやむを得ない事情により、学会参加自体をキャンセルすることになり、支出がなかった。論文校閲費用については、年度内に論文原稿を書き終わらなかったため支出しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に学会発表を行う。論文の英文校閲について5月中に執行予定である。
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