2015 Fiscal Year Research-status Report
「小進化の副産物」で高次の生態的動態と大進化パターンを理解する
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26650154
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 佑磨 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (00707622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 紀之 立正大学, 地球環境科学部, 助教 (00724965)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多様性 / 多型 / 個体群 / 動態 / 生態-進化フィードバック |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、文献やデータベースのデータを用いたメタ解析と、実験個体群を用いた実証により、種内多様性の進化と個体群動態の関係を解析した。 メタ解析に関しては、前年度に行なった鳥類やトンボ類の解析に加え、より詳細なデータの蓄積のある蝶類を用いて解析を行った。その結果、分布域の広さや環境の多様性について、種内に色彩の多様性がある種のほうが多様性のない種に比べ小さいことがわかった。このことは、色彩多様性の進化が、微環境の分割や捕食リスクの低減を通じて、より幅広い環境に生息することを可能にすることを示唆している。ただし、多様性の生息環境幅の関係は、雌に多様性のある種においてのみ見られた。すなわち、雄の多様性は集団のパフォーマンスに影響しないことを示唆している。これらの結果は、多様性の進化は、集団の生産力が高まったり、生産力減少のリスクを避ける場合にのみ、集団のパフォーマンスを高める可能性を示している。同時に、雄の多様性について多様性と分布域の広さに関係が見られたことは、分布域の広さや環境の多様さが色彩の多様性を高めているという逆の因果の可能性を否定するものである点もk重要である。 ショウジョウバエの実験個体群を用いた解析では、野外で見られる行動の多様性(平衡選択により進化的に維持されている)と個体群のパフォーマンスの関係を実験的に検証した。for遺伝子により支配された採餌行動の多型(rover型とsitter型)を用い、どちらかが単独で存在する集団と、2つの方が同居する集団で、集団内の幼虫の平均生存率を測定したところ、同居集団において生存率が最大になった。このことは、採餌行動の分化した個体が共存する条件では、集団の増殖率が高くなることを示唆している。 一連の解析・実験は、いずれも種内の多様性の進化と個体群動態を結びつけるものであり、個体群動態や軍種動態の理解に一隻を投じるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタ解析に適したデータセットの揃った分類群がそれほど多くなかったものの、現時点では、系統的に多様でな複数の分類群でメタ解析が行なえている。いずれも共通するパターンを示しており、解析は概ね順調であるといえる。すなわち、多様性と個体群動態に関する一般則が明らかになりつつある。また、本年度から開始した実験個体群を用いた実証実験の手法の確立にも成功したので、最終年度に十分な実験を行える準備が整っているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
色彩多様性と分布域の広さに関するメタ解析とショウジョウバエを用いた実験については、現時点で得られた成果をもとに論文としてまとめる。同時に、種内多型と個体群パフォーマンスに関する総説を執筆している。また、ショウジョウバエについては、長期的な個体群動態の予測を行うため、さらなる実験を行う予定である。すなわち、各種個体群パラメータを様々な多様度の条件で測定するとともに、個体数の変動を実測する。これらの成果は、国際学会を含む各種学会でも報告する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画していた遺伝解析のためのサンプルが不足していたため、分子実験に必要な経費が減った。遺伝解析と並行して実証実験を行なったが、こちらへの支出は予定よりも少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は実証実験に加え、遺伝解析を行う予定である。
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