2015 Fiscal Year Annual Research Report
発生システムの生態進化―なぜ内臓逆位は交尾する巻貝でのみ進化したのか
Project/Area Number |
26650161
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
浅見 崇比呂 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (10222598)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 螺旋卵割 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然集団の遺伝的背景のもとでは、左右逆に発生するだけで、動物の胚は奇形死亡率が増大する。この純化淘汰が内臓逆位の進化を抑制している。対して巻貝では、内臓逆位の逆巻系統がくり返し進化した。だがそれは、放精放卵せず交尾して繁殖する巻貝にかぎられる。なぜか。先行研究のないこの問題に、独自の実験システムと方法論により答える。モノアラガイは、右巻と左巻の交尾が可能な同時雌雄同体である。個体の巻型は、母親の核遺伝子型が決定する。左巻遺伝子のホモ接合体ddが産む卵はすべて左巻に発生し、右巻遺伝子ホモ接合体DDが産む卵はすべて右巻に発生する。ゆえに、DD×ddの交配により、両親の遺伝的背景(核ゲノム)を共有し、巻型の 遺伝子型も同一のDdでありながら、母性因子ゆえに左右逆に発生する個体が得られる。オナジマイマイの変異遺伝子rは、巻型決定能を欠く。そのため、ホモ接合体rrが産む卵塊からは、右巻と左巻がランダムに発生する。ゆえに、rrからは母性因子および遺伝的背景を共有する右巻と左巻が得られる。別途、rrと交配したDDから右巻Dd、およびDDと交配したrrから左巻Ddを得て、母性因子は異なるが遺伝的背景を共有する右巻と左巻、および右巻同士を得て、第三卵割終了直後の形態計測を行なった。その結果、オナジマイマイのラセミ遺伝子はこの表現型決定に関して完全劣性であることが明らかとなった。適応度パラメータとして、孵化率・成長率・生存率・交尾成功率・産卵率を、制御環境下(25℃、明期16h:暗期8h)で測定し、左右二型の間で比較した。その結果、孵化後の生存率、成長率、交尾成功率、産卵率には効果が検出されないが、孵化までの生存率にのみ効果があることが明らかとなった。
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