2015 Fiscal Year Annual Research Report
モクセイ科における二対立遺伝子型自家不和合性と、それがもたらす性表現の多様化
Project/Area Number |
26650165
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川北 篤 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80467399)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モクセイ科 / 自家不和合性 / S遺伝子 / 異花柱性 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにモクセイ科のさまざまな属で二対立遺伝子型自家不和合性の存在を示唆する予備的なデータが得られたが、最終年度は北海道標茶のハシドイ、および和歌山県友が島、京都市、神戸市長坂山3地点のネズミモチで受粉実験を重点的に行い、モクセイ科のハシドイ属とイボタノキ属で二対立遺伝子型自家不和合性が広く存在することを示す十分なデータを得た。特にネズミモチでは集団間で交配を行い、S領域の対立遺伝子が広く共有されていることを明らかにした。さらに和歌山県友が島のネズミモチについて、対立遺伝子の型が明らかになった75個体についてRAD-Seq解析を行い、得られたデータをもとに自家不和合性の型と一致する一遺伝子多型の解析を試みている。 研究期間全体を通して、被子植物で初めて、花に多型のない植物で二対立遺伝子型自家不和合性の存在が見つかったことは特筆に値する。この発見により、モクセイ科では科レベルでS対立遺伝子が2つのまま維持されてきた可能性があり、今後S領域の遺伝的解析を進めることでその検証が可能である。モクセイ科には異花柱性の属が少なくとも3回独立に進化しているが、祖先的な二対立遺伝子型自家不和合性が異花柱性の進化を促した可能性が高い。本研究の成果は、モクセイ科における性表現の進化のみならず、イソマツ科やミソハギ科のように、異花柱性が何度も独立に進化しているグループにおいて二対立遺伝子型自家不和合性が存在することを予感させるものであり、被子植物全体での一般性の検証が待たれる。
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