2014 Fiscal Year Research-status Report
スラウェシ島の湖沼性淡水魚における体色の多様化と類似化に関する研究
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26650167
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山平 寿智 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (20322589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北野 潤 国立遺伝学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (80346105)
猪股 伸幸 福岡女子大学, 文理学部, 准教授 (20301335)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 性淘汰 / 収斂進化 / メダカ / スラウェシ |
Outline of Annual Research Achievements |
赤道直下のスラウェシ島の湖沼性淡水魚の多くは,異なる湖に生息する近縁姉妹種間で体色が質的に大きく異なるが,同じ湖に生息する種は分類群を超えて体色が類似している.これは,センサリーバイアスによる収斂進化の結果を反映しているかもしれない.本研究は,本島の異なる湖に生息するメダカ科,サヨリ科,およびハゼ科魚類を対象に,各湖の光環境,各種のオスの体色,および体色に対するメスの選好性の間の相関の有無からその可能性を検討する.さらに,各種のメスの眼球で発現している遺伝子の発現量と配列の解析から,色覚の平行進化をもたらす共通の原因遺伝子の探索も行い,体色の多様化と類似化の遺伝基盤にも迫る. 26年度は,スラウェシ島南東部およびムナ島の8つの地点からメダカ(Oryzias woworae種群)とサヨリ(Nomorhamphus種群)の採集を行った.採集した成魚を活かした状態で室内に持ち帰り,雌雄判別の後に分光計を用いて,体表と鰭(胸鰭および尾鰭)の光反射特性を測定したところ,集団間でメダカもサヨリも体色の青みと鰭の赤みが大きく異なることがわかった.興味深いことに,鰭の赤みはメダカとサヨリとで平行的に変異しており,同一種群の集団間レベルでも体色が収斂進化していることが示唆された.また,各生息地の水の光透過特性(トランスミッタンス)ならびに日射強度(イラディアンス)を測定したところ,鰭の赤みの強いメダカやサヨリの生息する湖/河川は,短波長側の光線が優占する傾向にあることがわかった.これは,体色の収斂進化を強く支持している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地での採集・調査も首尾良く終了し,予定していたデータを採取することができた.また,種間レベルでのみ想定した体色の収斂進化が,集団間レベルでも進化していることが強く示唆され,新しい知見も得ることができた.同時に,眼球の遺伝子発現解析のためのサンプルも採取して日本に持ち帰ることができた.研究目的に沿って,おおむね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,眼球での遺伝子発現解析ように採取してきたサンプルの処理を進める予定である.また,スラウェシ島の黄色いメダカやサヨリが分布している地域にも採集・調査に出かけ,本年度に得られた上の知見と比較して,種間レベルでの収斂進化のメカニズムを解明していく予定である.
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Causes of Carryover |
RNAの解析を次年度に回したため,その機材や薬品の費用だけ物品費が安くなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にRNA解析を行うので,余剰分は確実に消費することができる.
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