2014 Fiscal Year Research-status Report
水田に設置した地下潅漑システム(FOEAS)による水稲の冷害軽減効果の検証
Project/Area Number |
26660011
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岩間 和人 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 特任教授 (70144219)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水田輪作 / 水稲 / 直播栽培 / 地下潅漑システム / FOEAS / 減水深 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年5月に北海道大学北方圏フィールド科学センター内の実験用水田20アールに地下潅漑施設(FOEAS)を設置した。当初の予定では水稲の直播栽培を行うことにしていたが、施工者のパディ研究所の小野寺社長から、施工時の土壌状態から考えると、1年目は畑作物を栽培し、土壌深層部に亀裂を入れる必要があるとのアドバイスを受けた。このため、6月上旬から10月中旬まで、畑作物3種(トウモロコシ、ダイズ、バレイショ)を試験栽培した。降雨の少ない乾燥時期であったが、地下からの潅水によって、トウモロコシとダイズの発芽は、隣接した畑圃場に比べて順調であった。また、降雨後の排水が早く、バレイショの培土作業や秋期の収獲作業を順調に進めることができた。夏期の一時期、降雨が少ないために畑圃場では乾燥ストレスによる葉のしおれが観察されたが、FOEAS圃場では地下からの潅水によって乾燥ストレスを受けることなく経過した。秋期にバレイショ(早晩性の異なる5品種)を順次収獲したが、植え付けが慣行栽培に比べて大幅に遅れたにもかかわらず、畑圃場の7割程度の収量を得ることができた。ダイズとトウモロコシについては、畑圃場との正確な比較を行っていないが、例年の畑圃場並の収量が得られた。 作物栽培の終了後に、FOEAS圃場で土壌表面から10cmの深さに湛水する入水と排水を繰り返し行い、完全排水から10cm深さ湛水までに要する時間を測定した。また、入水量と排水量の差異、および一日当たりの水深の変化から、減水深を推定した。一日当たりの減水深は1.5-2.0cmと計算され、代掻きを全くせず、漏水対策していない水田圃場としては栽培に問題ない値であることを確認できた。なお、夏期での高い蒸散量を考えると、漏水対策を畦畔部に行う必要があると考え、27年春に植え付け前にベントナイトで漏水対策を行うことにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FOEASの設置を当初の計画では25年春に行う予定であったが、使用水田圃場での遺跡調査のために秋までずれこみ、さらに土壌状態から26年春に延期された。このため、26年春からFOEAS圃場で水稲乾田直播栽培を行う予定を変更せざるを得なかった。しかし、かわりに栽培した畑作物では順調な生育と収量を得ることができ、水田輪作体系でのFOEAS設置の威力を明らかにできた。また、作物栽培後に入水量と排水量を測定する装置を試作し、湛水に必要な水量と時間を確認できた。また減水深を推定し、翌年の栽培前に漏水対策を取る必要性を明らかにできた。また、翌年春での水稲乾田直播栽培の準備のために、FOEAS圃場での実施情報を収集するとともに、3月に融雪剤を散布して4月早期から実験を開始することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
1。4月中旬に畦畔部にベントナイトを散布して、畦畔からの漏水(全漏水の約半分と推定)防止対策を行う。 2。5月中旬に北海道主要水稲品種ななつぼしを乾田状態で直播する。播種後に土壌深さ(40,20,5cm)に小型温度計を埋設して地温の推移を継時的に測定する。また、発芽調査後に湛水を開始し、一日吸水量を測定するとともに、給水部と田面水の水温を小型温度計で測定する。隣接した移植栽培圃場でも移植後に同一の水温測定を開始する。 3。幼穂形成開始期、穂ばらみ期、出穂期、登熟中期および収獲期に地上部の形態と乾物重をFOEAS直播圃場と慣行の移植栽培圃場で行い、生育の差異を明らかにする。同時に、両圃場への吸水量と水温・地温を比較する。なお、穂ばらみ期までの調査では根量の測定も行う。 これらの結果に基づき、FOEAS圃場での土壌深層部からの吸水が圃場の地温と水温に及ぼす影響およびこれと作物体の生育・収量との関係を考察し、寒地でのFOEAS設置が水稲栽培に及ぼす利点を確定する。
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Causes of Carryover |
当初の計画に比べてFOEAS設置が大幅に遅れたため、26年度は水田での乾田直播栽培を行えず、畑作物での予備的な調査に終わった。このため、調査に必要な物品費(消耗品費)と人件費が予定よりも少なかった。なお、27年度に必要な資材(小型温度計、漏水対策資材、融雪剤、農薬)については、情報収集後に26年度予算で購入し、27年度当初から実験を開始する準備を整えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月当初から実験を行い、学生2名を実験補助者として播種前の準備作業を行なう。このため、調査に必要な人件費が増加する。また、得られた実験結果を学会で発表するために上記実験補助者の旅費も必要になる。前年度からの繰り越し金は、これら増加する使用金に充当する。
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