2014 Fiscal Year Research-status Report
花粉培養系を利用した雄性配偶子のシングルセル・オミクスによる受精因子の解析
Project/Area Number |
26660017
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
星野 洋一郎 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (50301875)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 花粉 / 花粉管伸長 / オミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
高等植物の花粉は、二細胞性(二核性)花粉と三細胞性(三核性)花粉の二つのタイプがある。二細胞性花粉は成熟時に栄養核と雄原細胞の二つの核を含み、柱頭上で発芽した後に花柱内で雄原細胞が分裂して精細胞を形成する。その後、子房内に達した花粉管は珠孔から胚珠に侵入して卵細胞と中央細胞に精細胞を運搬する。これらのプロセスは巧妙に制御されている。本研究では二細胞花粉を持つアルストロメリアを材料に用い、成熟花粉および花粉発芽過程のダイナミクスを明らかにするために、これまで開発してきた液体培地による花粉発芽系を用いて花粉および花粉管のオミクス解析を行った。 成熟花粉(100粒、500粒、1000粒)、発芽花粉(発芽直後、培養開始6, 12, 18時間後)を供試し、質量分析装置を用いたプロテオーム分析を行った。花粉は顕微鏡下でマイクロキャピラリーを用いて回収し、その後、タンパク質の抽出と精製、還元アルキル化およびトリプシン処理を行い、FT-MSとIT-MS/MSの組み合わせで測定を行った。データ取得後、NCBInr, Swiss-Prot, Arabidopsis thaliana (NCBI), Oryza sativa (NCBI)の四つのデータベースを使用して解析を行った。 その結果、同定されたタンパク質数は、成熟花粉:113個、発芽直後:106、6時間後:93、12時間後:87、18時間後:86と減少傾向にあった。また、花粉の発芽・花粉管伸長に伴い18個のタンパク質が消失、9個のタンパク質が新たに出現、42個のタンパク質が常に出現しているデータを得た。本研究により、花粉管内におけるタンパク質の動態を解析する手法を確立することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通りに実験は進んでおり、成熟花粉および花粉管伸長過程のプロテオーム解析の手法を確立し、データを取得することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
花粉および花粉管を対象にしたシングルセル・オミクスの解析手法を確立するために、供試する花粉管の数を100、50、30、10、1個程度に減らし、取得できるデータの比較を行う。また、プロテオーム解析に加え、メタボローム解析への応用可能性についても検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
支出を見込んでいた質量分析用のタンパク質抽出試薬類が、校費で購入済みのものを使用することができたので当該年度の支出を大幅に節約することができた。また、プロテオームのデータを取得するまでの多数の試行錯誤を見込んでいたが、予想以上に早く至適条件を設定することができ、そのため試薬代の支出を抑制することができた。 また、実験には冷凍保存した花粉を供試したことから、植物材料の維持管理の経費が節約できた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
プロテオームの解析に加え、メタボローム解析を行うことから新たに誌薬類が必要となる。これらの誌薬類は高額のものが多く、その購入のための経費として支出する予定である。 また、これまで使用してきた冷凍保存の花粉がなくなったため、今年度は新たに植物体の育成を行う。そのための維持管理の経費として経費を支出する予定である。
|