2014 Fiscal Year Research-status Report
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26660021
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
山田 哲也 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20422511)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アサガオ / 開花時刻 / メラトニン / メラトニン合成酵素遺伝子 / 花弁展開 / AANAT / ASMT / N-アセチルトリプタミン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に得られた成果は以下の通りである. 1. 開花直前に12時間の暗期を与えて開花を誘導したアサガオ品種「紫」の切り花にメラトニンまたはその合成阻害機能が示唆されているN-アセチルトリプタミン(NAT)を処理し,花弁展開や開花時刻への影響を評価した.その結果,メラトニンを処理した切り花では花弁展開が促進され,開花時刻が早まることを確認した.一方,NATを処理した切り花では,花弁展開が抑制され,開花時刻が遅れることを確認した.以上から,アサガオではメラトニンが花弁展開を促進することで開花時刻を早める役割を果たしていることが示唆された.
2. アサガオ切り花の花弁におけるメラトニン含量の変動を調査し,開花へのメラトニンの関与を明らかにすることを試みた.12時間の暗期で開花を誘導した切り花の花弁では,花弁展開に伴いメラトニンが増加する傾向が示された.また,暗期と共にNATを処理した切り花の花弁では,メラトニンの増加が抑制され,花弁展開も抑制された.一方,暗期を与えずに開花を誘導した切り花の花弁では,メラトニンの増加は認められなかった.以上から,アサガオの暗期誘導性の開花では,メラトニンにより花弁展開が促進されていることが示された.
3. アサガオ切り花の花弁におけるメラトニン合成酵素遺伝子(InASMTおよびInAANAT)の転写量を調査し,展開時の花弁におけるメラトニンの増加が合成酵素遺伝子の転写レベルで制御されていることを明らかにすることを試みた.12時間の暗期を与えて開花を誘導した切り花では,花弁の展開に先立ち,遺伝子の転写量が増加することを確認した.一方,暗期を与えずに開花を誘導した切り花では,展開時の花弁で転写量の増加は認められなかった.以上から,アサガオの花弁展開の促進に関わるメラトニンの増加が合成酵素遺伝子の転写レベルで制御されていることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,アサガオ切り花の花弁におけるメラトニンの代謝中間体の定量以外,交付申請書の研究実施計画欄に記載した全ての実験を予定通り行い,「一定時間の暗期を受けた花弁で合成されるメラトニンが花弁展開を誘導することで開花時刻を制御していることを明らかにする」という所期の目的を達成することができたため.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,メラトニン合成酵素遺伝子の発現抑制体や過剰発現体を作出し,花弁のメラトニン含量を増加あるいは減少させることで,花弁展開の促進や抑制,開花時刻の改変が可能であることを明らかにする.なお,アサガオは形質転換体作出の難易度が高いため,リンゴ小球形潜在ウイルス(apple latent spherical virus: ALSV)ベクターを用いたウイルス誘導ジーンサイレンシング(VIGS)による遺伝子発現の抑制も併せて実施する予定である.また,比較トランスクリプトーム解析により,メラトニンによる花弁展開の促進に関わる遺伝子群を同定する予定だが,材料の作出と実験系の確立が困難であることが予想される.そこで,他の研究でアサガオの花弁展開への関与が確認されている遺伝子について,その発現にメラトニンやメラトニン阻害剤の処理が及ぼす影響をqPCR法により併せて調査することで,所期の目的を達成できるようにする.
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Causes of Carryover |
メラトニンの定量実験について,当初の計画よりも実験材料が多量に必要であることが2015年1月頃に判明したため,材料を準備できる次年度に反復実験を実施することになった.その実験に必要な試薬を購入するための予算として,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額と翌年度分として請求した助成金の一部を合わせて,メラトニン定量実験に必要な試薬を購入し,反復実験を実施する.
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