2014 Fiscal Year Research-status Report
新発見の植物内生氷核活性物質の特性と凍結開始機能の徹底解明
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26660030
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
石川 雅也 独立行政法人農業生物資源研究所, 植物生産生理研究ユニット, 上級研究員 (90355727)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 耐寒性 / 環境耐性 / 氷核活性 / 氷 / 凍結 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が凍結温度で生存するには、細胞内の水の凍結回避及び細胞外の特定部位の凍結促進が必須である。レンギョウ枝の場合、担当者の研究から、髄から凍結開始し、その原因となる氷核活性物質がシュウ酸カルシウム1水和物(CaOX①)結晶であることが判明した。これまで本結晶に氷核活性の報告はなく、その機構や役割、機能等について詳細な解明が必要である。 本年度は、CaOX①結晶の氷核活性の特徴を明らかにするため、試験管法を用いた、より定量的な氷核活性測定法を開発し、既知の氷核活性物質と大量精製したレンギョウCaOX①結晶とを比較した。試験管内の水の量(0.5,1,2mL)及び添加結晶量を変えて、氷核活性を測定した。いずれの系でも、結晶添加量と氷核活性の関係を明らかにできた。売っている本結晶やヨウ化銀についても同様に測定した。レンギョウ枝髄の氷核活性は、微量でも、ヨウ化銀に匹敵する高い活性(-2℃程度)をもつこと、市販品は-5℃以下の活性しかないことが判った。CaOX①結晶の氷核活性は、70℃やオートクレーブ熱処理、乾燥、有機溶媒等に安定であった。塩酸処理により、本結晶は消失し、氷核活性は著しく低下した。 レンギョウ枝髄のCaOX①結晶を髄片をセルラーゼ、ペクチナーゼ処理することで、大量に精製し、その特徴づけを行った。粉体X線回折により、レンギョウ枝髄片、単離結晶を解析し、標準物質と比較したところ、一水和物に特徴的なピークを有することが判り、2または3水和物のピークは全く見られなかった。また、昇温熱分析による結晶重量の変化から、やはりレンギョウ枝髄由来の本結晶が一水和物であることが推定された。以上から、レンギョウ枝髄の氷核活性を有するシュウ酸カルシウムは、一水和物結晶のみから構成されることが予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全般に本結晶の氷核活性の特徴づけが進んだ。試験管法に用いる低温恒温水槽の調子が悪く、調整を要したため、定量的な氷核活性解析がやや遅れた。このため他の植物の凍結過程の赤外線サーモビュアによる解析やSEM電顕による結晶解析等が十分にできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の予定解析項目を予定通り行う。これに加え、遅れている他の植物の凍結過程の赤外線サーモビュアによる解析やSEM電顕による結晶解析等を行う予定である。
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Causes of Carryover |
試験管法に用いる低温恒温水槽の調子が悪く、調整を要したが、自分で修理し、直すことができた。このため定量的な氷核活性解析がやや遅れた(この装置を用いた解析は、すべて自作のため、殆ど予算がかからなかった)。本年度の粉体X線回折と熱分析は、近隣の研究者の好意で無償で解析することができた。また、氷核活性測定に関する消耗品はこれまでの買置きがあったため、殆ど費用を要しなかった(いずれもこれらの費用は次年度はかかる予定)一方、分析等に予算がかかる、他の植物の凍結過程の赤外線サーモビュアによる解析やSEM電顕による結晶解析等が十分にできなかったため、予算のほとんどが次年度使用する予定となった(これらの解析は、27年度以降に継続して行う予定)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
粉体X線結晶回折、熱分析、赤外線サーモ解析、SEM解析、TEM解析、合成、氷核活性解析等の消耗品、依頼分析、旅費等に予算を使用する予定。
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Research Products
(10 results)