2015 Fiscal Year Research-status Report
植物における免疫抑制療法の新規開発によるファイトプラズマ耐性植物の創出
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26660032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
姫野 未紗子 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員 (10646970)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ファイトプラズマ / 篩部壊死 |
Outline of Annual Research Achievements |
ファイトプラズマ(Phytoplasma)は世界各地で甚大な被害を引き起こす病原細菌であり、植物の篩部細胞内に寄生する。その防除法の確立が待たれるが、培養や形質転換が困難なことから、その分子生物学的研究は進んでおらず、抵抗性に関わる知見も乏しい。本研究では、ファイトプラズマが引き起こす篩部壊死には植物の免疫応答が関与するとの推測のもと、その応答を抑制することでファイトプラズマ耐性植物の育種を目指す。平成27年度は、ファイトプラズマ感染時の植物側の免疫応答についてその全体像に迫ることを目的に、シロイヌナズナの変異体を用いた接種試験により、ファイトプラズマが引き起こす病徴に関与する植物側の宿主因子について解析を進めた。その結果、アントシアニン合成関連遺伝子を欠損させたシロイヌナズナでは、野生型と比較してファイトプラズマ感染による細胞死が激化することが明らかになった。同様の現象は、ナス科植物であるペチュニアにおいても観察された。一方、それら変異体ではファイトプラズマの蓄積量に影響は見られなかった。以上の結果をこれまでの知見と統合すると、ファイトプラズマ感染植物では、アントシアニンの蓄積が誘導されることで、感染による二次的な細胞死を抑制することが示唆された。さらに、アントシアニンの誘導は、ファイトプラズマの生存や増殖に直接作用するような防御応答ではなく、感染に伴うストレスから植物自身を守り老化の促進を抑制する効果を持つ応答であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の実験計画通り、病徴に関与する植物側の宿主因子について解析を進めた。おおむね計画通りに実験を遂行でき、ファイトプラズマ感染による篩部壊死に続く二次的な細胞死をアントシアニン類が抑制することを明らかにできたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前年度までに得られた知見をもとにして、ファイトプラズマ感染による篩部壊死を緩和するファイトプラズマ耐性植物の作出を目指す。具体的には、候補となる植物変異体に接種試験するとともに、免疫応答など植物宿主側の応答を解明する。
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Causes of Carryover |
次年度に高額な消耗品類の購入を予定しているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の当該研究費は、主に消耗品の購入のために使用する予定である。高額な機器の購入予定はない。
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