2014 Fiscal Year Research-status Report
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26660038
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
柿澤 茂行 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 主任研究員 (10588669)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 植物ウイルス / 進化分子工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年考案されたレアコドンウイルスは、従来の弱毒ウイルス(生ワクチンウイルス)の問題点の多くを克服した次世代の弱毒ウイルスとして期待されているが、ウイルスゲノムを人工合成して作製するため遺伝子組換えウイルスとなってしまう点が問題である。本研究は、遺伝子組換えを用いることなくレアコドンウイルスを作出する新たな手法を植物ウイルスに対して応用することで、遺伝子組換えでないレアコドン弱毒ウイルスの作出を行うことを目的とする。 レアコドンは、細胞内におけるtRNA の存在量が少ないことに起因すると言われている。あるコドンに対するtRNA 量が少ない場合、そのコドンを持つ遺伝子の翻訳速度が低下し、タンパク質の発現量が制限される現象が起こる。大腸菌において外来の遺伝子を発現させる際には、導入する遺伝子のコドンを大腸菌ゲノムのコドン頻度に従って最適化するような手法も広く利用されており、加えて、大腸菌のレアコドンに対するtRNA遺伝子を過剰発現させることで、レアコドンを含む遺伝子でも高発現が期待できるように改変された大腸菌株も多数市販されている。従って、コドン頻度による発現量の制御は多くの生物に共通した性質である。また多くのウイルスでは、宿主内におけるウイルスの複製量を最大にするため、ウイルスゲノムのコドン頻度が宿主のコドン頻度に対して最適化されていることが知られている。 本年度は、シロイヌナズナやそれ以外の植物種においてレアコドンの調査を行った。その結果、多くの植物ではコドン頻度やレアコドンの種類が比較的似ていることが分かった。加えて、いくつかの植物ウイルスにおけるコドン頻度を調べたところ、宿主である植物ゲノムのコドン頻度とある程度の相関関係にあることがわかった。これは宿主内におけるウイルス遺伝子の効率的な転写翻訳を考えると、妥当な結果だと思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、植物ゲノムにおけるコドン頻度やレアコドンを調査し、レアコドンに対応するtRNA遺伝子をシロイヌナズナへと導入するための系を検討し、その後の研究も進展中である。その結果、多くの知見が得られたと同時に、来年度への研究の展開に向けた準備段階を遂行することができたことから、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を踏まえ、来年度は研究を大きく進展させる予定である。具体的には、レアコドンに対応するtRNA遺伝子をシロイヌナズナへと導入するための系を検討したため、これを用いて形質転換シロイヌナズナを作出し、レアコドンウイルスの作出系を確立する。
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Causes of Carryover |
tRNA遺伝子をシロイヌナズナへと導入するための系としてアグロバクテリウムによる系を検討したが、本年度の成果により追加でプロモーター配列の差異を検討する必要性が生じたため、次年度はこれも含めた研究を実施する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
プロモーターの差異を検討するため、複数のベクター系を構築し、植物における発現量の差異を検討する。これに関わる消耗品費として使用する予定である。
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