2014 Fiscal Year Research-status Report
RNAi技術を利用したカメムシ目害虫防除における有用ターゲットの探索と評価
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26660045
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
長谷川 毅 独立行政法人農業生物資源研究所, 加害・耐虫機構研究ユニット, 主任研究員 (30414931)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 口針鞘 / 可溶化 |
Outline of Annual Research Achievements |
・ツマグロヨコバイ口針鞘の大量回収 ツマグロヨコバイを人工飼料から吸汁させ、その人工試料中に残存した口針鞘を回収する。問題点は、人工飼料に水分が多いとツマグロヨコバイの翅が張り付き、死亡が高率で発生してしまうこと。また、吸汁時に、翅や排泄物、その他の夾雑物が人工試料中にのこることも大量回収の問題となる。 アガロースゲルをPET製アイスクリームカップの蓋に凝固させ、アイスクリームカップを閉じ、垂直に固定すること、ゲルを2.5%と固めにすること、ショ糖を混入しツマグロヨコバイにゲルからの吸汁を促すことなどから、張り付いて死亡することを防ぎゲル中に口針鞘を形成させることができた。ただし夾雑物に関しては、口針鞘が吸着性を持つこと、僅かではあるがゲルに産卵が行われたり、ゲル中にカビが一部生じてしまうことから、ゲルを溶解する手法での回収は難しいと判断した。そのためピンセットで注意深く回収した。口針鞘の直径は10-15マイクロメートルと髪の毛の5-8分の1の太さしかなく、顕微鏡を用いての作業となった。このために数ヶ月を要したが、溶解方法の開発と口針鞘タンパク質の同定のために必要な口針鞘約40万本の回収ができた。 ・ツマグロヨコバイ口針鞘の溶解法の開発 ツマグロヨコバイの口針鞘は、ごく一部は、界面活性剤(SDS)とジスルフィド結合を切断するDTT等によって溶解が可能であったが、大部分は不溶であった。この部分は、他の通常のタンパク質で用いられる溶解方法では溶解しなかった。このことから口針鞘のコア部分は、高度の重合が示唆された。トビイロウンカ口針鞘の溶解に我々が用いた弱アルカリ(水酸化ナトリウム)を使用した手法では、解析が可能な大きさのペプチドは回収できなかった。しかし、さらに低濃度でかつ温度をあげることで、成分の解析可能な程度の可溶化法を開発できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツマグロヨコバイと同じカメムシ目昆虫のトビイロウンカの口針鞘の可溶化の実績が役に立った。このため、水酸化ナトリウムを用いる手法が開発できた。しかし、唾液腺のトランスクリプトーム解析などの比較解析や溶解の違いなどから、その構成タンパク質成分および、凝固の様式に関しては、トビイロウンカの口針鞘のものと大きく異なることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
・可溶化された口針鞘タンパク質を成分解析が可能なレベルまで精製する。 ・精製したタンパク質について配列情報などを解析する。 ・既存のツマグロヨコバイ唾液腺トランスクリプトームデータベースが、必ずしも口針鞘成分の解析に適したものではないので、解析に適した形のデータベースの整備を行う。 ・口針鞘成分の同定を行う。 ・dsRNAを用いた吸汁による口針鞘構成成分タンパク質遺伝子のノックダウンを行い、死亡率や遺伝子発現の変化などを解析する。対象とする昆虫は、本来の対象となるツマグロヨコバイとともに、他のカメムシ目昆虫についても行う。
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Causes of Carryover |
予想したよりも飼育容器の消耗が少なかったこと。また口針鞘の採集および可溶化の検討に時間を大幅にとられたため、成分解析のための口針鞘を回収することはできなかった。このため、アガロースゲルなどの試薬、飼育容器の費用などに差異が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、口針鞘構成成分の解析に用いる口針鞘の採集は再度行うことになるので、そのために必要な試薬や飼育容器など、次年度使用額を用いることとする。
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