2015 Fiscal Year Research-status Report
メタノールをメディエータとした微生物と植物間の新しい相互作用モデルの確立
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26660074
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
三井 亮司 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (60319936)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Bradyrhizobium / Methylotroph / Autotroph / Rhizosphere / Lanthanoids / Methylobacterium / Methanol / Symbiosis |
Outline of Annual Research Achievements |
自然環境において植物は多くの微生物と共生関係にある。植物根圏や葉上では、ある種の微生物群が菌叢を形成しており、この菌叢形成が植物の良好な生育や病原微生物からの防御機能を有していると考えられている。 本研究では植物周辺微生物、植物ミクロバイオーム形成にメタノールが関与していることを予測し研究を進めてきた。メタノールは植物の生長に伴い、植物のペクチンメチルエステルが加水分解されて生じる。これにより植物の生長に伴い葉上からメタノールが放出されている。葉上の植物マイクロバイオームとしてMethylobacterium属、根圏ではRhizobium属などのプロテオバクテリアが主要な菌群として含まれることが報告されており、これらの微生物は植物ホルモンなどの菌体外分泌により植物の成長を促す。私たちは根圏のRhizobium属のモデル菌株として豆科根粒菌Bradyrhizobium diazoefficiens USDA110株を使用して初めて希土類依存的にメタノールをエネルギー源とする独立栄養生育を明らかにしてきた(論文投稿中)。また、すでにダイズの水耕栽培液中にメタノールを検出することに成功しており、根圏の菌叢の形成にメタノールが寄与している可能性を明らかにした。植物ミクロバイオームを形成する菌群は希土類依存的なメタノールの酸化を行うメタノールデヒドロゲナーゼ(MDH)であるXoxFを有している。XoxFの分布は葉上優勢種のMethylobacterium属もBradyrhizobium属にも保存されているが、葉上優勢種はさらにアイソザイムとして希土類依存型ではないCa依存型のMDHのMxaFIをもち、土壌中から葉上の移行にそれぞれのMDHを厳密に使い分けていること、さらにこの使い分けの鍵が希土類の土壌から葉上にかけての濃度勾配である可能性が明らかになってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
根圏での菌叢形成には植物由来のメタノールと土壌中の希土類元素が重要な役割を担っていることを想定し、根圏のモデル微生物としてB. diazoefficiens (B. japonicum) USDA110を用いてメタノールを利用した代謝系の解析を行ってきた。初年度から当該年において遺伝子破壊株を用いたメチロトロフィックオートトローフ生育を確認し、主要な酵素の活性の発現条件などから、メタノールをエネルギー源として希土類元素依存的オートトローフとして生育するモデルの確立にいたり論文をまとめ学術雑誌に投稿した(査読中)。また、確立したモデルをもとにメタノールと希土類元素を利用する新規な細菌のスクリーニングを行い数株を分離した。 一方で葉上で形成される菌叢における優勢種であるMethylobacterium属の葉上移行モデルの解明には微生物にはM. extorquens AM1を用いて行っている。ここで鍵となる希土類依存型メタノールデヒドロゲナーゼ(XoxF)が希土類濃度に応答して発現していることを明らかにしてきた。土壌モデルよりも調節系が複雑であり、モデルの構築には至っていないが手がかりとなる結果ができつつあると考えている。 植物の生長に伴う植物根圏の菌叢の変化をxoxF1を指標として定量PCR法により検出する方法においては、根圏土壌から安定したゲノム抽出法を確立できたが、xoxF1をユニバーサルに取得するプライマー設計に苦労した。様々なバクテリアのアライメントからプライマーを数セット作製し、増幅断片をシーケンスしたところ多様なxoxF1群を検出できていたことから、今後このプライマーを用いた植物生長に伴う変化をリアルタイムPCR法を用いて定量していきたい。 以上より当初の進捗予測と新たな展開も開けつつあり、いくつかのクリアすべき問題点も含むがおおむね順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の最終年度であり、植物葉上と根圏で形成される特有の菌叢形成メカニズムを明らかにすることを目的とする。最終年度においては主に葉上の優勢種として生育するMethylobacterium属細菌の希土類依存型MDHであるXoxFに着目して研究を行っていく。現在までに根圏での菌叢形成にメタノールとLaやCeなどの軽希土類元素が関与していることをB. diazoefficiensをモデルとして明らかにしてきた。しかし、土壌で植物と相互作用する根粒菌と土壌から葉上へ移行し、葉上から放出されるメタノールを利用するMethylobacterium属は鍵となる物質がメタノールと希土類であることに変わりはないが、用いられる代謝系や酵素の発現調節機構は異なっている。Bradyrhizobium属、Methylobacterium属ともにXoxFタイプの希土類依存型MDHを有するが、葉上優勢種であるMethylobacterium属はBradyrhizobium属が持たないMxaFIタイプのMDHアイソザイムをもっており、私たちはMethylobacterium属が希土類濃度を関知してXoxF(土壌)からMxaFI(葉上)へと切り替えてメタノールを利用していると推定している。今後、XoxF1, xoxF2およびMxaFIのアイソザイムの特徴や誘導メカニズムを明らかにして、植物と微生物の共生関係に新たな知見を加えられるよう推進していく予定である。
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Research Products
(7 results)