2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物の澱粉粒分解に対する新しい理論の構築と応用研究
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26660079
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
木村 淳夫 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90186312)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 植物 / 澱粉粒分解 / 酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の澱粉粒(生澱粉)分解系の鍵酵素は、生化学の教科書にあるようにα-アミラーゼと信じられている。その理由は、本酵素が澱粉粒に吸着し分解するためである。一方、我々はイネのα-グルコシダーゼ(AGと略)も澱粉粒に吸着・分解する現象を見出し、『AGも鍵酵素である』可能性を得た。本研究の目的は、植物AGが示す澱粉粒分解の機構を究明し、本分解系の鍵酵素であることの理論確立と応用研究への発展である。最終年に当たる本年度も研究は順調に進み、以下の成果が得られた。 1. 吸着・分解現象の植物AGへの一般化:前年度に植物AG(3種類)が澱粉粒へ吸着・分解する現象を確認した。本年度は、微生物由来(糸状菌と酵母由来)の精製AGを用いて吸着・分解実験を行った。微生物AGはいずれも吸着・分解活性を示さず、本現象が植物AGのみに観察されることを見出した。従って「澱粉粒への吸着・分解は植物AGのみに見られる一般的な性質」と結論した。 2. イネAGの吸着部位の決定:前年度に構築したイネAGのC末端領域を微生物AGに導入・交換したキメラ酵素(澱粉粒への吸着を獲得)を用いて、C末端領域にある吸着サイトを部位特異的変異法で調べた。その結果、芳香族アミノ酸が関与する知見が得られ、変異により吸着能を失うことから当該残基が構造因子と決定した。 3. 吸着・分解能力の付与:前項で明らかにしたイネAGの澱粉粒吸着に関与する構造因子を微生物AGに付与し、吸着能の増加を確認できた。昨年度にテンサイAGで解明した分解に関する構造因子は、当該因子を含む構造自体が微生物AGに存在しないことが判明し、因子付与が困難であった。これは逆に、植物AGのみが示す澱粉粒吸着に対し、本AG群が有する触媒部位周辺の特異的構造が重要であることを強く支持する知見である。
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Research Products
(5 results)