2014 Fiscal Year Research-status Report
高い形質転換効率をもつシアノバクテリアによる新規光依存型酵素の創成
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26660084
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤田 祐一 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (80222264)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | シアノバクテリア / 形質転換 / プロトクロロフィリド還元酵素 / 進化分子工学 / クロロフィル生合成 / 強光適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
光依存型プロトクロロフィリド還元酵素 (LPOR) は、プロトクロロフィリドのC17=C18二重結合を立体特異的に還元し、クロロフィルaの直接の前駆体クロロフィリド a を生成する反応を触媒する。触媒作用の駆動に光を利用するLPORは、新たな光依存型酵素の構造鋳型として利用できる可能性を秘めている。本研究では、シアノバクテリアLeptolyngbya boryana の LPOR の光依存的な反応に重要であると推定される構造に対応する遺伝子領域を、終止コドンを含まないセミランダムな DNA 配列に置換したライブラリーを構築し、これを自発的な形質転換能をもつシアノバクテリア Synechocystis sp. PCC 6803 (Syn6803) のpor欠損株(LPOR欠損株で強光感受性を示す)を宿主として強光耐性付与を指標に選抜することで、新規 LPOR (活性型新規LPOR) の創出を目指す。Syn6803のpor 欠損株は、強光・好気条件では致死形質を示すが、本条件でも生育可能な擬似復帰変異株(PR株)を生じることがある。選抜時でのPR株の出現をできるだけ最小限とすることが、新規LPORの効率的な選抜には不可欠である。そこでまず、PR株の出現を可能な限り抑制しながら、なおかつ新規LPORの創出により強光耐性を付与される株を選抜できる条件を確立した。さらに、この条件で、パイロットライブラリーとして調製した小規模ライブラリーからの選抜を行った。その結果、強光・好気条件での生育が十分に回復した形質転換体が 10 個出現した。これら強光耐性株がPR株であるかどうかを現在確認中である。今回のパイロットライブラリーの選抜ではSyn6803の形質転換効率が充分に高くなかった。今後は、形質転換効率が安定して高い条件を確立し、新規 LPORの創出を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規なLPOR選抜のための親株であるpor-recJ欠損株(形質転換効率向上のためpor欠損株にrecJ欠損を加えた二重欠損株)を強光・好気条件で選抜すると、LPORの活性に依存しないPR株を多数生じることがある。このようなPR株の出現は、新規LPORの効率的な選抜を困難なものとしてしまう。そこで、今年度は、PR株の出現が最も抑制される条件の検討を行った。その結果、前培養を強光・嫌気で行い、選択培養を一旦弱光・好気条件で行った後、強光・好気条件で選抜を継続する、という条件を確立することができた。また、パイロットライブラリーの選抜により、セミランダム配列から予想される塩基配列を有するクローンを複数個確認することができた。さらに、用いている人工合成セミランダム一本鎖DNAには一定の頻度で1塩基程度の鎖長誤差によるフレームシフトを生じたクローンが得られることがわかった。この頻度を想定することで、ライブラリーの実質的な有効サイズを具体的に評価することが可能となった。また、想定通りに得られた塩基配列から推定されるアミノ酸配列をBLASTサーチしたところ、有意な類似性を示す多数の天然タンパク質が検出された。このことから、セミランダムな人工遺伝子から成るライブラリーであっても天然のタンパク質と同様の機能を有する配列を含むことが充分期待できる。このように本選抜の前提となる条件を検討することができ、本選抜に向けての基盤がほぼ整備できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後以下のような観点で研究を推進する。 1)新規セミランダム人工DNAの調製:今回用いている人工合成セミランダムDNAに対応するアミノ酸配列の長さは、鎖長の正確性を保ちながらのDNA合成の技術的限界から、LPORでの欠失ループ領域よりも短い。このことが新規LPOR創出の頻度を低下させている可能性が考えられる。DNA合成の技術の進展は著しいことから、欠失ループ領域と同等の鎖長のセミランダム人工遺伝子を新たに合成し、これを用いたライブラリーを調製し、選抜を行う。 2)形質転換効率の向上:slr2031欠損により形質転換効率がさらに上昇することが期待されることから、por-recJ-slr2031という三重変異株を親株とした形質転換系も併行して進める。 3)LPOR類似遺伝子からのLPOR創出:シアノバクテリアのゲノムには、LPORと同じ短鎖デヒドロゲナーゼ/レダクターゼファミリーに属しLPORと低い類似性を示しながらLPOR活性を示さない機能未知のORFが複数存在する。このようなORFを用いて、活性型LPORのループ領域に該当する領域のみを活性型LPORのループ領域に置換することで、新規なLPORを得ることができるかどうか検討する。 4)PR株が有する変異の同定:PR株が示す強光耐性がどのような分子機構で生じているのかを明らかにするため、あえてPR株を単離し、ゲノムリシーケンスによって原因変異を特定する。その情報をもとに、PR株が生じにくい新たな親株を作出し、新規LPORの選抜に供する。また、PR株の原因遺伝子は、酸素によって不活性化される光非依存型プロトクロロフィリド還元酵素(DPOR)の、酸素からの防御に関わっている可能性が期待される。このことから、PR株の原因遺伝子同定は、クロロフィル生合成系に対して酸素からの防御メカニズムという新たな視点を生み出す可能性を有する。
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[Journal Article] Loss of cytochrome cM stimulates cyanobacterial heterotrophic growth in the dark.2015
Author(s)
Hiraide, Y., Oshima, K., Fujisawa, T., Uesaka, K., Hirose, Y., Tsujimoto, R., Yamamoto, H., Okamoto, S., Nakamura, Y., Terauchi, K., Omata, T., Ihara, K., Hattori, M. and Fujita, Y.
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Journal Title
Plant and Cell Physiology
Volume: 56
Pages: 334-345
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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