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2014 Fiscal Year Research-status Report

司令塔としてのパネト細胞ネットワークが解き明かす食品機能の新展開

Research Project

Project/Area Number 26660100
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

櫻木 直也  北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 特任助教 (80420660)

Project Period (FY) 2014-04-01 – 2016-03-31
Keywordsパネト細胞 / 自然免疫 / 栄養吸収 / ミネラル
Outline of Annual Research Achievements

本研究はからだの司令塔としての“腸”に注目し、中でも腸上皮細胞の中枢であるパネト細胞の細胞膜および分泌タンパク質を解析することによって、パネト細胞を中心とするネットワークがいかに構築されているかを明らかにし、さらにこのネットワークを利用し、食品の栄養素などの取り込みや腸内細菌叢を制御することによって人の健康に貢献することが目的である。
平成26年度は、研究実施計画に沿いパネト細胞ネットワークを構築する細胞膜および分泌タンパク質の解析を行った。パネト細胞の細胞膜および分泌タンパク質の解析には、シグナルシークエンストラップ法を採用した。本手法は、細胞のRNAからcDNAを合成し、細胞膜タンパク質と分泌タンパク質に共通するシグナル配列を有するタンパク質を選択的に同定する手法である。SST-REXに供するRNAサンプルの条件としてシグナル配列を保持している必要があるため、RNAが分解を受けず高品質であること、かつ、パネト細胞以外の細胞由来のRNAが混ざらないことが重要である。そこで、セルソーターJSANを用いてパネト細胞を高純度に、生きたままの状態で大量にソーティングを行って、純度90%以上のパネト細胞を10の8乗個得た。次に、この細胞からRNAを抽出した結果、SST-REXの解析に十分量である5 マイクログラムの高品質なRNAを得た。
得られたRNAサンプルを元としたSST-REX法による解析の結果、37種類の遺伝子が同定された。同定された遺伝子の中には、パネト細胞のマーカーとなり得る抗菌ペプチドであるCryptdin遺伝子やLysozyme遺伝子が含まれていることから、本手法で得られた遺伝子群はパネト細胞由来の遺伝子が含まれることが推定できる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究ではパネト細胞ネットワークを明らかにするため、まず、パネト細胞の細胞膜および分泌タンパク質を明らかにすることを本年度の目標とした。高純度かつ高品質のパネト細胞RNAが得られることが肝要であったが、それには、これまで困難であった生きた状態のパネト細胞を高純度にかつ、大量にソーティングする必要があった。平成26年度は研究計画通りに必要量のパネト細胞のソーティングを行い、SST-REXによる解析まで完了させることが出来た。パネト細胞のソーティングマーカーであるCD24や、パネト細胞の自然免疫機能を担うCryptdinが同定されていることから、本手法の妥当性も示されたと考える。
今回同定された遺伝子群にはパネト細胞ネットワークを構築する可能性が考えられる遺伝子が複数存在する。1つはミネラル類のレセプターが挙げられる。これは、食品中に含まれるミネラル類をパネト細胞が腸管管腔から直接うけとり、吸収上皮細胞や幹細胞に働きかけることにより吸収を制御している可能性が考えられる。次にインシュリン分泌に関わる因子も重要なネットワーク構築因子として考えられる。これは、内分泌因子としてパネト細胞がネットワークを構築し他の臓器を制御している可能性を示していると考えられる。さらには、機能未知の遺伝子が複数得られている。これは、パネト細胞が従来報告されている自然免疫に働くのみならず、新しい機能を持つ可能性を示していると考えられる。このように今回の解析結果からパネト細胞が新しい機能を持つ可能性が示された。これらのことから平成26年度は当初の目的をすべて達成し、平成27年度にさらなる解析を行う。

Strategy for Future Research Activity

平成27年度は、SST-REX法により得られた37遺伝子を中心に、パネト細胞がどのようにネットワークを構築し、機能するのかを明らかにする。そのためには、まず、各遺伝子のパネト細胞における発現を検証する必要がある。現在、パネト細胞とそれ以外の上皮細胞から作成したcDNAライブラリーを用いて、Real-Time PCR法にて発現の検証を行っており、これを順次進める。
パネト細胞における発現が確認された遺伝子はそれぞれの特徴に応じて機能解析を行う。ミネラル類の受容体に対する応答には、腸管を模した培養系であるエンテロイドを用いて解析を行う。エンテロイド培地中にミネラル類を添加し、パネト細胞から放出される作用因子の同定や、吸収上皮細胞などにおける栄養受容体の発現、内分泌細胞から放出されるホルモンなどを評価し、パネト細胞ネットワークが栄養吸収や内分泌に与える影響を評価する。
これらの評価を通じて、パネト細胞を通じた新しい食品機能を明らかにし、さらにはこのパネト細胞ネットワークを利用した栄養素の取り込み制御や、腸内細菌叢を制御することによって人の健康へ寄与する可能性を明らかにする。

  • Research Products

    (5 results)

All 2015 2014

All Presentation (5 results)

  • [Presentation] 同位体顕微鏡で小腸の吸収機能を視る2015

    • Author(s)
      櫻木直也、中村公則、綾部時芳、永田康祐、坂本直哉、圦本尚義
    • Organizer
      第6回安定同位元素イメージング技術による産業イノベーションシンポジウム
    • Place of Presentation
      北海道大学学術交流会館(北海道 札幌市)
    • Year and Date
      2015-03-02 – 2015-03-02
  • [Presentation] 抗菌ペプチドαディフェンシンによる腸内環境の恒常性制御と疾病2014

    • Author(s)
      綾部時芳、櫻木直也、中村公則
    • Organizer
      第20回日本エンドトキシン・自然免疫研究会
    • Place of Presentation
      順天堂大学(東京都 文京区)
    • Year and Date
      2014-12-05 – 2014-12-06
  • [Presentation] 高脂肪食による肥満における抗菌ペプチドα-defensin分泌の関与2014

    • Author(s)
      川田綾香、中村公則、櫻木直也、綾部時芳
    • Organizer
      第37回日本分子生物学会年会
    • Place of Presentation
      パシフィコ横浜(神奈川県 横浜市)
    • Year and Date
      2014-11-25 – 2014-11-27
  • [Presentation] Paneth細胞α-defensinによる腸内細菌叢制御と疾患との関連の解明2014

    • Author(s)
      中村公則、櫻木直也、綾部時芳
    • Organizer
      2014年度 生理学研究所研究会
    • Place of Presentation
      自然科学研究機構 生理学研究所(愛知県 岡崎市)
    • Year and Date
      2014-10-27 – 2014-10-28
  • [Presentation] 腸内細菌を制御するαディフェンシンから疾病を眺める2014

    • Author(s)
      綾部時芳、櫻木直也、中村公則
    • Organizer
      第51回日本消化器免疫学会総会
    • Place of Presentation
      京都大学医学部芝蘭会館(京都府 京都市)
    • Year and Date
      2014-07-10 – 2014-07-11

URL: 

Published: 2016-05-27  

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