2014 Fiscal Year Research-status Report
塩基ペプチドによる筋原線維加熱凝固阻止能に関する研究
Project/Area Number |
26660102
|
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
宮口 右二 茨城大学, 農学部, 准教授 (60250990)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 塩基性ペプチド / プロタミミン / トリプシン分解 / プロナーゼ分解 / 筋原線維タンパク質 / 加熱ゲル化阻害能 / 分子間相互作用 / タンパク質の不溶化 |
Outline of Annual Research Achievements |
塩基性アミノ酸であるアルギニンは筋原線維の加熱ゲル化を促進することが知られている。一方、アルギニンがアミノ酸組成の7割を占める塩基性ペプチドのプロタミンでは、逆に筋原線維のゲル化を阻害する作用のあることが予備実験の結果より示唆されている。そこで本研究では、PROおよびPROペプチド存在下での筋原線維の物性改変およびタンパク質の分子間相互作用を解析した。まず、トリプシンおよびプロナーゼを用いてPROの消化試験を行い、3 種類のプロタミン分解物を得た。トリプシンを用いて分解度が3.1 %および5.4 %の分解物(T-PRO1およびT-PRO2)を得た。また、プロナーゼにより31.8 %分解したプロタミン(P-PRO)を調製した。次に、未処理のPROまたはPRO分解物を筋原線維ホモジネートに添加し、粘度および加熱後のかたさ応力を測定したところ、PROおよびT-PROの添加では粘度、かたさ応力がいずれも大きく減少した。一方、P-PROの添加ではいずれも無添加の対照区と同等の値を示した。 そこで、種々の条件(PRO添加量、pHおよび塩濃度)を変えて筋原線維ゲルの物性を調べたところ、PRO添加量が0.2 %以上、pH 5.5 ~ 7.5、塩濃度0.5 M以下で筋原線維のゲル化阻害能が確認された。高塩濃度条件下でもゲルのかたさ応力が低下したことから、PROの加熱ゲル化阻害能はイオン強度に影響されないことが示唆された。さらに、SDS-PAGE分析によりPROと筋原線維タンパク質との分子間相互作用を調べたところ、PRO存在下では、筋原線維の一部のタンパク質が不溶化していることが確認された。本結果より、プロタミンは筋原線維のゲル化に関与する種々のタンパク質を不溶化させ、筋原線維の加熱ゲル化を阻害している可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
筋原線維タンパク質の物性に及ぼすプロタミンの影響がわかってきた。すなわち、計画どおりにプロテアーゼを用いて種々のプロタミン分解物を調製し、得られた各種塩基ペプチドの種類により、筋原線維の加熱ゲル化に及ぼす効果は加水分解度で異なっていることを明らかにできた。すなわち、プロタミンの加水分解度が低い場合は、筋原線維の加熱ゲル化を阻止する能力を保持していたが、加水分解度が高くなると、同作用は失われた。また、電気泳動法によりプロタミンと筋原線維タンパク質との分子間相互作用に関しても興味深い新知見が得られた。また、同塩基性ペプチドの性状については、ゲル濾過法およびアミノ酸分析による解析でその一部を明らかにすることができたことから、本研究はおおむね順調に進んでいるものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、種類の異なるプロテアーゼを用いてプロタミンのペプチドを得たが、プロタミンのペプチドの相同性と筋原線維のゲル化阻害能との関係をさらに明らかにしていくため、酵素活性の異なるトリプシンを用いて、得られた塩基性ペプチドの性状を調べるとともに、当初から予定していた筋原線維の精製物であるアクトミオシンを調製し、プロタミンペプチドの添加がアクトミオシンの物性に及ぼす影響について調べる。また、十分に明らかにできなかった塩基性ペプチドの性状についても検討することにしている。これらの研究を進めることで、塩基性ペプチドと塩基性アミノ酸の筋原線維に及ぼす物性に及ぼす違いを明らかにするとともに、塩基性ペプチドの作用機序を明らかにできるものと考えている。
|