2014 Fiscal Year Research-status Report
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26660103
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
東 徳洋 宇都宮大学, 農学部, 教授 (30151062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 乳脂肪球皮膜 / 脂肪細胞分化抑制 / 泡沫化細胞 / アポトーシス誘導 / 肥満予防 / 粥状動脈硬化予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
ペプシン処理MFGMの脂肪細胞への添加培養において50mg/mL濃度で細胞内脂肪含量が70%以下に抑えられたことから、ペプシン処理MFGMには脂肪滴蓄積抑制作用があることが示唆された。Real Time PCRの結果からインスリン感受性促進アディポサイトカインであるアディポネクチン、レプチン、ペリリピンの発現がMFGMの添加によって抑えられ、さらに、脂肪酸代謝因子(PPARα、CPT-1、ACOX、SREBP1)の発現、また、脂肪酸合成因子であるFASもMFGM添加によって発現が抑えられた。以上のことからMFGM添加によって脂肪細胞の脂肪滴蓄積抑制効果は、脂肪細胞の分化を抑制した結果ではないかと考えられた。そこで脂肪細胞の分化を制御する転写因子(C/EBPα、PPARγ)の発現を見たところ、これらの発現がMFGM添加によって有意に抑えられていることが明らかになった。さらに肥満改善効果を期待して、肥大化した脂肪細胞へペプシン処理MFGMの添加培養を行ったが脂肪滴蓄積の改善効果は観察されなかったことからMFGMには肥満予防の効果があることが示唆された。 次に、ペプシン処理MFGMが泡沫化マクロファージのアポトーシスにどのような影響を与えるのかを検証した。泡沫化細胞にペプシン処理MFGMを添加培養し、核染色をした結果、アポトーシスをしている細胞の割合がペプシン処理MFGM未添加の値と比較して50、100 μg/ mL添加で有意に増加した。一方、同条件で泡沫化前のマクロファージでも効果を検証したところ、ペプシン処理MFGMを100 μg/ mL添加した時にも有意差は得られなかったことから、ペプシン処理MFGMの添加により泡沫化細胞が選択的にアポトーシスに誘導されたことが分かった。 以上のことから、MFGM摂取による肥満予防ならびに粥状動脈硬化の予防効果が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
乳脂肪球を覆う脂肪球皮膜(MFGM)の構成成分には、脂肪球の形成・分泌に関与する蛋白質も含まれており、その中にはマクロファージの酸化 LDL やアポトーシス抑制因子(AIM)の取り込み、 脂肪細胞の脂肪酸取り込み等に関与するスカベンジャー受容体CD36(乳科学的にはPAS4)も含ま れる。そこで、MFGM 摂取により、これらの受容体機能を阻害し、脂肪蓄積抑制による抗肥満効果や泡沫化細胞へのアポトーシス誘導による粥状動脈硬化抑制効果が期待されるという作業仮説を立て、26年度は培養細胞によるvitroの系で、その検証をおこなった。あくまでMFGMの経口摂取による効果ということを考慮し、ペプシン処理を仮想消化モデルとしてMFGMのペプシン消化産物を添加培養してその効果を調べたところ、脂肪細胞の肥大化を抑制し、泡沫化細胞選択的にアポトーシス誘導する現象を示すことができた。 よって、本年度の目的は、おおむね達成できたものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
ペプシン処理MFGMによるCD36スカベンジャー機能抑制は、泡沫化前のマクロファージのステージにおける酸化LDLの取り込みに関しても可能性がある。そこで今年度は泡沫化誘導時にペプシン処理MFGMを添加培養し、取り込み阻害によるマクロファージ泡沫化の抑制効果を調べる。それにより、MFGM にはマクロファージの泡沫化を抑制すると同時に泡沫化してしまった細胞にはアポトーシスを誘導するという二段構えの動脈硬化予防の可能性を検討する。また、この効果がPAS4に由来するかどうかを単離PAS4を用いて検討するとともに、経口摂取したMFGMの効果をラットあるいはマウス介入試験により明らかにする。 泡沫化細胞が分泌したAIMの血中濃度が高まると、脂肪細胞はCD36を介してこれを取り込む。取り込まれたAIMは脂肪合成を阻害し、脂肪細胞から分泌される脂肪酸とMCP-1により、脂肪組織へマクロファージが浸潤し、マクロファージからのTNF-α分泌が促進され、炎症が全身に波及する結果(慢性炎症)、生活習慣病が発症するという悪循環が想定されている。そこで、MFGMにより、AIMによって促進されるこの慢性炎症を、MFGMをAIMの取り込み競合阻害剤として利用することにより抑制できるのではないかとの仮説をたて、計画を変更(追加)して、マクロファージのTNF-α産生誘導を抑えることによる慢性炎症抑制の可能性を、ペプシン処理MFGM存在下で脂肪細胞とマクロファージの共培養によるin vitroの系, および高脂肪食誘導肥満マウスによるMFGM摂取、あるいはMFGMを含むバターミルク摂取で検討することにした。
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Causes of Carryover |
購入の予定をしていた備品(代用品で間に合わすことができたので支障はなかった)が予算不足で買えなかったが、予期せぬデイープフリーザーの故障が生じ、申請した備品の予算はその買い替えに充当した。その差額、ならびに以前の試薬や器具の買い置きが使えたことにより本年度の予算執行に余裕が生じ、次年度に持ち越すことができた。これにより、当初の計画外ではあるが実施可能な実験動物や消耗品の購入に予算を当てることで、新たな計画が可能になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越し金は、CD36を介したAIMの取り込みの阻害に帰する一連のMFGMの効果として、肥満脂肪組織において想定されている、AIMによって促進されるマクロファージのTNF-α分泌による慢性炎症の悪循環をMFGMにより緩和できるかどうかを探る計画を新たに計画し、脂肪細胞とマクロファージの共培養によるvitroの系、および肥満マウスを作成し、そのMFGM食介入試験の実施のための購入資金にあてる予定である。そこで新たな計画に携わる予定の院生の学会発表旅費や謝金にも充当する。
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