2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26660103
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
東 徳洋 宇都宮大学, 農学部, 教授 (30151062)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脂肪球皮膜 / マクロファージ / 泡沫化細胞 / 肥満 / 動脈硬化 / 慢性炎症 / 生活習慣病 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳脂肪球皮膜(MFGM)から調製したPAS4に富む画分のペプシン消化産物が、泡沫化マクロファージのアポトーシス誘導効果を示したことから、ペプシン処理MFGMによる本効果の責任分子はPAS4である可能性が示唆された。また、酸化LDL取り込みによるマクロファージの泡沫化誘導時に、ペプシン処理MFGM添加培養により脂質の蓄積が有意に抑制され、さらに、RT-PCRにより泡沫化の指標でもあるAIMの発現抑制が認められた。従って、MFGMには、泡沫化マクロファージのアポトーシス誘導に加え、前段階の泡沫化も抑制することにより、二段構えで動脈硬化を予防する効果がある可能性が示唆された。 高脂肪食飼育マウスにおけるMFGM介入試験(経口摂取)では、体重増加の抑制とともに、肝臓の中性脂肪、遊離脂肪酸濃度増加の有意な抑制効果が認められた。これらの糞中濃度には差がないことから、この効果は脂肪の吸収抑制によるものではないことが確認された。さらに、RT-PCRにより、MFGM摂取群では脂肪細胞における細胞分化制御因子であるPPARγ発現量の低下が認められた。高脂肪食による肥満モデルマウスにおいても、MFGM経口摂取により体重の減少、血中の中性脂肪、遊離脂肪酸の減少、さらには脂肪組織内の炎症性サイトカインTNFαの発現抑制が認められた。MFGMによる体重抑制効果は、脂肪細胞への分化・脂肪蓄積の抑制、褐色脂肪細胞の増加、白色脂肪細胞のベージュ細胞への分化促進、あるいは、肥大化脂肪組織に浸潤したマクロファージが産生するTNFα産生の抑制によるUCP-1発現上昇の可能性も考えられる。しかし、3T3-L1(脂肪細胞)とRAW264(マクロファージ)の共培養により誘導されるマクロファージのTNFα発現が、MFGM 添加により抑制されるかどうかを試してみたところ、否定的ではないが再現性のない結果にとどまっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MFGMペプシン消化産物の泡沫化マクロファージに対するアポトーシス誘導効果が、MFGMの主要構成タンパク質の一つであるPAS4による可能性が示唆されたこと、また、酸化LDL取り込みによるマクロファージの泡沫化をペプシン処理MFGMが抑制することが示されたことにより、MFGM にはマクロファージの泡沫化を抑制すると同時に泡沫化してしまった細胞にはアポトーシスを誘導するという二段構えで動脈硬化を予防する可能性を示すことができたことは概ね順調であると考えている。 また、高脂肪食飼養マウスにおいて、MFGM摂取による体重増加の抑制、脂肪細胞への分化をサポートするPPARγ発現量の低下、あるいは肥満モデルマウスにおけるTNFαの発現抑制等が認められ、MFGMには抗肥満作用があることが明らかになった。ここまでは概ね順調であると考えているが、肥満に伴う脂肪組織へのマクロファージの浸潤、マクロファージの産生するTNFαにより引き起こされる慢性炎症、これらの現象に対するMFGM摂取の影響については、in vivo, in vitroで今後解明すべき課題として残された。
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Strategy for Future Research Activity |
MFGM摂取による体重増加の抑制に、UCP-1の発現が関与しているかどうか、白色脂肪細胞のベージュ化をも含めて in vivo, in vitroで検討する。in vivo においては、マウスの褐色脂肪細胞においてUCP-1の発現の亢進がみられるか、白色脂肪細胞からベージュ脂肪細胞への誘導が見られるかを組織学的に、あるいはマーカー遺伝子の発現を調べることによって検討する。in vitroにおいては株化された白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞をもちいて、MFGMペプシン消化産物添加培養によるベージュ脂肪細胞への誘導、UCP-1発現への影響をノルアドレナリン様刺激に加え、低温処理による誘導の場合についても調べる。 肥満に伴う脂肪組織へのマクロファージの浸潤、マクロファージの産生するTNFαにより引き起こされる慢性炎症に対するMFGM摂取の影響についても高脂肪食肥満モデルマウスを用いて調べるとともに、現在検討中の白色脂肪細胞とマクロファージの共培養によるin vitroの系でも培養条件を再検討したうえで、白色脂肪細胞のベージュ化を含めてMFGMペプシン消化産物の効果を検証する予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度当初に計画を変更して、マクロファージのTNF-α産生誘導を抑えることによる慢性炎症抑制の可能性を、白色脂肪細胞とマクロファージの共培養によるin vitroの系、 および高脂肪食誘導肥満マウスによるMFGM介入試験で検討することにしたが、高脂肪食誘導肥満マウスの脂肪組織に浸潤してきたマクロファージあるいは肥大化脂肪細胞が産生するTNF-αの定量や、白色脂肪細胞とマクロファージ共培養によるin vitroの系での炎症モデルの再現に手間取っており、結果的に経費を消化できずに大幅に次年度使用額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、引き続きin vitro, in vivoの系において、生活習慣病へと繋がる慢性炎症の抑制に関するMFGMの影響を調べ、その再現性を図る。MFGMの、炎症誘導因子の発現への影響の検討に加え、MFGM摂取による高脂肪食飼育マウスや肥満モデルマウスの体重増加抑制の原因の解析を行う予定であり、mRNA発現の変化や産生された各因子の定量に用いるELISAキット、培養器具等の購入に繰越した経費で充当することができるものと考えている。備品を購入する予定はない。
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