2014 Fiscal Year Research-status Report
オートファジー活性の指標となる新規分泌性マーカー分子の探索
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26660110
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大西 康太 名古屋大学, 生命農学研究科, 研究員 (80723816)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / マーカー分子 / 細胞外分泌分子 / 飢餓応答 / 質量分析 / SWATH / Atg7 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内異常分子の分解を担うオートファジーは、老化やそれに伴う幅広い疾病の予防戦略として注目される一方、生体における活性強度を簡便に評価する手段に乏しく、オートファジー活性を調節する活性物質の研究開発は遅れている。本研究では、細胞外分泌分子に着目し、オートファジー活性を反映する新規分泌性マーカー分子の探索・同定を目的とした。以下に、平成26年度における研究成果について記載する。 リソソーム酸性化阻害剤であるbafilomycinによりオートファジー分解を阻害したマウス胚性繊維芽細胞(MEF)の培養上清から、低分子画分およびタンパク質画分を回収し、質量分析装置(LC-Q-TOF MS, TripleTOF 5600, AB SCIEX)を用いて網羅的解析を行った。まず、低分子画分に関して、bafilomycin処理によるC-16 ceramideの増加を認めたが、再現性の確認のため異なる質量分析装置による分析を行ったところ、同様の結果を得ることができなかった。続いて、タンパク質画分に対して高精度な定量的解析(SWATH)を実施したところ、bafilomycin処理により計17種のタンパク質分泌が増加することを見出した。WBによる解析の結果、興味深いことに、これらのタンパク質の中でもpyruvate kinase M1/M2(PKM)は、オートファジー活性化条件であるアミノ酸飢餓条件においてもその分泌量が増加し、オートファジーに必須な遺伝子であるAtg7をノックアウトしたMEFからはほとんど分泌されないことが明らかとなった。これらの刺激条件において、PKMの細胞内発現量に大きな変化は認められなかったことから、細胞内に発現しているPKMのごく一部がAtg7依存的に分泌される可能性が示唆された。現在、PKMの細胞内局在の変化に着目し、分泌機構の解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度における研究により、オートファジー活性の変化に応答してPKMの細胞外分泌が増減することを見出した。しかし、PKMの分泌量は、オートファジー活性化条件であるアミノ酸飢餓により、Atg7(オートファジーに必須な遺伝子)依存的に増加する一方で、リソソーム酸性化阻害剤であるbafilomycinによりオートファジー分解を阻害した条件においても増加した。このように複雑な結果が得られたことから、PKMの分泌量を指標にオートファジー活性を簡便に評価することは難しいと考えられえる。オートファジーマーカーとなりうる分泌分子を同定できなかった点で、本研究は当初の計画から少し遅れていると評価せざるをえない。 しかし、PKMがAtg7依存的に分泌される機構を検証することは、オートファジーと細胞外分泌機構との関与を理解する上で重要と考えられる。現在、アミノ酸飢餓またはbafilomycin処理条件におけるPKMの細胞内局在の変化に着目し、分泌機構との関与を検証している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度における研究により、オートファジーに必須な遺伝子であるAtg7に依存してPKMの細胞外分泌が増減することを見出した。しかし、オートファジー活性化条件および阻害条件のいずれにおいても、その分泌量が増加することから、本分子の分泌量の変化を指標としてオートファジー活性を評価することは難しいと考えられる。そこで、当初計画していたELISAによるオートファジー評価系の確立を取りやめ、PKM分泌機構の解明に取り組む予定である。 近年、成熟したオートファゴソームが細胞膜と融合し、小胞内部の分子を細胞外に分泌する現象が報告されており、exophagyと呼ばれている。PKMの分泌に関しても、Atg7のノックアウトにより分泌量が減少する点や、bafilomycinによりオートファジー分解を後期で阻害することで分泌量が増加する点など、共通点が多く認められたことから、exophagyにより分泌される可能性を想定し、その検証を行う予定である。現在、アミノ酸飢餓またはbafilomycin処理条件におけるPKMの細胞内局在について検証している。
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Causes of Carryover |
研究計画当初は、マーカー分子を指標としたオートファジー評価系として、新規特異的抗体の作製およびその抗体を用いたELISAの確立や、実験動物の血液および尿を用いたオートファジー活性の評価を予定していた。しかし、前述したように、平成26年度における研究においてオートファジー活性の指標となるマーカー分子を同定することができなかったため、これらの予定していた実験を実施するに至らなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度において、PKMがオートファジーに必須な遺伝子であるAtg7依存的に分泌されることを見出した。PKMは、オートファジー活性化条件および阻害条件のいずれにおいてもその分泌量が増加することから、マーカー分子としての利用は難しいと考えられる。しかし、PKMのAtg7依存的な分泌機構を検証することは、オートファジーと細胞外分泌機構との関与を理解する上で重要である。 本年度においては、まず、PKMの分泌が確かにオートファジー依存的なものであるかどうかをsiRNAによりAtg遺伝子群をノックダウンした細胞を用いて確かめる予定である。その後、アミノ酸飢餓およびbafilomycin処理条件におけるPKMのオートファゴソームへの局在性について評価し、本分子がexophagyにより分泌されている可能性について検証する。従って、次年度利用額に関しては、多種類のsiRNAや細胞分画に用いる試薬を購入するために利用する予定である。
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