2014 Fiscal Year Research-status Report
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26660120
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
丸谷 知己 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40112320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 美青 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (80294966)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 土石流 / 水土分離 / 停止堆積 / 水路実験 / 粘性変化 / 衝突荷重 |
Outline of Annual Research Achievements |
土砂災害の防止軽減には、移動体において水と土砂の物理的な分離によって、移動体自身の粘性(内部摩擦角)を高めることが、ひとつの重要な鍵となっている。そのために、力学的方法に加えて化学反応を利用した移動体の変質も視野に入れる。解決すべき課題は、①力学的方法と化学的方法の組み合わせ方、②現実の河川渓流での準備・設置方法、③それぞれの方法の適用タイミング、④化学反応後のゲル物質等の除去・撤収方法、⑤平常時における維持・メンテナンス方法がある。これらの課題解決のために、初年度は実験設備の設計・製作および予備実験による実験手法の確立を行った。 【実験水路製作】力学実験と化学実験を併用できる勾配可変(14度~18度)型で、幅広のアクリル製実験水路を設計・製作し、流量も調節できるような水循環を可能とした。水路全体はスチール枠で固定して、水路下流端に土砂氾濫場所とワンセットで実験室に据え付ける。また。実験用周辺測定機器として、ロードセルを利用した瞬間衝撃力測定装置を自前で製作し、水路下流端に設置する。 【実験手法の確立】河川渓流における土砂流出において巨礫や流木の混入も考慮して、土砂濃度の変化と氾濫亭積範囲の計測を行えるようにする。また、水路製作の現実との対比のために、現地調査により実際の土砂移動の様子を観察した。これらのことにより、フルード相似則に準拠しつつも、現実の土砂移動体に近い土石流実験を可能にする。 【予備実験】予備実験としては、化学的方法を実施する前に、まず力学的方法により土石流の発生と停止を実現させるように、流量、濃度等のパラメータを確定し、ロードセル衝撃測定装置によって、実際の現象を再現するに有意な差が出るかを検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
【実験設備の設計・製作】本研究に特化した実験用水路を製作するために、まず現地で自然の河川渓流の特徴把握を行った。これを基にして、スチール枠で支持したアクリル製(土砂摩擦部のみガラス貼り)の長さ8m、幅及び深さ0.2mの勾配可変型直線水路を製作した(業者発注)。また、現地観察によって得た知見から、水路中流部に落差部(幅0.2m長さ0.1m深さ0.1m)を10箇所設け、上蓋によって落差部の数を調節できるようにした。さらに、水路下流端に自前の(瞬間)衝撃力測定用のロードセルを設置し、運動エネルギーの変化を計測できるようにした。水路上流端には、土石流等の運動をイメージして、土砂濃度を調節した後に段波を発生するためのゲートを設けた。 【予備実験】実験は、比重2.3~2.5の混合土砂で、最大粒径D_max=5㎜~15㎜、平均粒径D_50=0.7㎜~1.05㎜の土砂を用いて、水路勾配16度(土石流発生限度14.8度)で落差部をすべて閉鎖して行った。また、移動体に流木を6~10%混入させる実験も行った。その結果、移動体の質(粘性)をけることにより、衝突加重が2.8~8Nの範囲で変わることがわかり、化学的方法を用いた粘性制御の実験に意義のあることがわかった。 【本年度の達成度】本年度は、物理的に移動体の土砂の比重、粒径、流木混入、水路勾配などを変化させて、移動体の粘性とロードセルによる衝撃力に有意な変化が現れるかを解決した。これらのパラメータを、落差部の開放によって、これを利用して変化させることにより、またそれを化学反応により実現することにより、本研究の目的が達成される。これにより、本年度は全体2年間の計画の60%以上が進捗し、本年度の達成度は100%といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度において、実験水路の製作、予備実験棟をすべて終えたので、27年度は物理的・化学的条件(パターン)を変えて、それぞれのパターンの試行回数を増やす。また、その結果を現地での自然状態の土砂動態と比較して、水土分離による土砂移動体のエネルギー減殺の効果を明らかにする。さらに、これらの成果を広く普及するために、国内外の学会等で発表する。 【実験】①落差部を開放し、河道起伏によるエネルギー低減を計測する。②力学的な水土分離の限界性を明らかにする。③ゲル化剤の投入・敷設により移動体への取り込みによる移動速度(衝撃力)低下を計測する。④化学的な水土分離の限界性を明らかにする。⑤力学的・化学的な水土分離対策の併用による移動体のエネルギー減殺効果を明らかにする。 【現地との比較】火山性荒廃渓流および堆積岩荒廃渓流において、現地での土砂移動と比較し、人工的な水土分離による土砂流出のエネルギー減殺効果を証明する。比較の方法は、流出土砂総量、流体力(実験では衝撃力として計測)を用いる。また、流木を含んだ実際の土砂移動体の災害実例と実験結果を比較し、その減殺効果も評価する。 【研究発表】研究成果を国内外の学会等で発表し、討議した上で適用範囲を提案する。
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Research Products
(1 results)