2014 Fiscal Year Research-status Report
熱帯高木の水利用深度の特定;一斉開花への参加頻度と開花順序の決定機構の解明
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26660124
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中川 弥智子 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70447837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 奈緒子 三重大学, 生物資源学研究科, 講師 (00423012)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 一斉開花 / 開花頻度 / 吸水深度 / 湿潤熱帯林 / 安定同位体分析 / 根系形態 / ボルネオ |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジア熱帯雨林に特有な現象として知られている一斉開花(不定期な間隔で起こる群集レベルでの同調した開花)の有力な気象トリガーは、短期間の乾燥であることが報告されている。一方、長期観察より、一斉開花への参加頻度や樹木群集の中での開花順序が樹種によって異なりそうであることが見えてきたものの、その要因は解明されていない。乾燥した期間が続くと、表層土壌だけでなく徐々に深い土壌の乾燥も進むと予測されることから、樹種による根のはり方の違いが利用できる水の深度の違いをもたらし、乾燥への感受性の種間差を生じる結果、一斉開花への参加頻度や開花順序を決定しているという仮説を検証することを試みた。 まず、18年間におよぶ273個体・55種を含むフェノロジーデータから、樹種ごとの開花頻度を算出したところ、開花頻度は9.64回/10年から0.86回/10年と樹種によって大きく異なり、有意な種間差が認められた。また、高頻度開花樹種は低頻度開花樹種に比べて群集中での開花が1ヶ月以上早いことも確認できた。 次に、高頻度~低頻度に参加するフタバガキ科4種を選定し、根元から先端方向へたどりながら手作業で掘りすすめたところ、樹種によって根系形態の差異が認められたものの、直根の形態を手作業で調べることは難しく、根系形態のみから水利用深度の種間差を考察することはできなかった。 そこで、対象個体の近くの深さ別土壌と対象個体の材コアを採集し、水を真空蒸留法で抽出した後、水の酸素安定同位体比を測定したところ、土壌水の酸素安定同位体比の範囲内に材からの水の酸素安定同位体比の値が収まらない個体や、土壌プロファイルが概ねS字型の複雑な形となったため、表層から深層までの複数地点の吸水深度が推定されるなど、湿潤熱帯林では降水の影響によって土壌プロファイルが複雑に変化し、土壌プロファイルに基づく吸水深度の推定は難しいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一斉開花の参加頻度や開花順序に関しては解析が完了し、野外観察からの示唆を数値化することができたが、その参加頻度や開花順序を決定するメカニズムの検証にはまだ至っていない。ただ、平成26年度の結果を踏まえて、湿潤熱帯における高木種の吸水深度を推定するための別の手法を検討中である(今後の研究の推進方策を参照)。
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Strategy for Future Research Activity |
湿潤熱帯林ではスナップショット的な土壌プロファイルに基づく樹木の吸水深度推定は難しかったことから、高頻度~低頻度に一斉開花に参加するフタバガキ科を対象に、材からの水の連続的な酸素同位体比の変動パターンを、1~3地点からの連続的な深度別土壌水の酸素同位体比変動パターン(深さ10cm~100cmまで)と比較し、両パターンの同調性から吸水深度を推定する方法を試みる。合わせて、複数の吸水源がある場合に、得られたサンプルの安定同位体比が各吸水源に依存する割合として、もっともらしい範囲を算出するIsoSource モデルを用いた吸水深度推定も実施する。
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Causes of Carryover |
スナップショット的な土壌プロファイルに基づく樹木の吸水深度推定が難しそうであることが判明したため、当初予定していた抽出・分析を途中で打ち切ったため、抽出・分析にかかる費用が減少したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
その分、次年度に追加での試料採集のための旅費や、試料の抽出・分析に関する費用として使用する計画である。
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Research Products
(8 results)
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[Book] Social-Ecological Systems in Transition (分担執筆)2014
Author(s)
K.Takenaka Takano, M.Nakagawa, T.Itioka, K.Kishimoto-Yamada, S.Yamashita, H.O.Tanaka, D.Fukuda, H.Nagamasu, M.Ichikawa, Y.Kato, K.Momose, T.Nakashizuka, S.Sakai
Total Pages
198
Publisher
Springer