2015 Fiscal Year Research-status Report
ガンマ線スペクトルサーベイから土壌中の放射性セシウム分布を探る
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26660133
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
安田 幸生 国立研究開発法人 森林総合研究所, 気象環境研究領域, 主任研究員 (50353892)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 放射性セシウム / ガンマ線 / 森林土壌 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林土壌に含まれる放射性セシウム量とその分布を非破壊的に測定するために、林床面におけるガンマ線のエネルギースペクトル(ガンマ線スペクトル)の波形情報を用いて、土壌中の放射性セシウム濃度とその深度分布を推定する方法の確立を目指している。本年度はまず、除染処理された森林土壌中における放射性セシウム濃度と放射線量率の分布を調査するため、福島県郡山市内の広葉樹林において深度毎の土壌サンプリングと線量率測定を行った。対象林分は除染(林床の落葉等の除去)から約4年が経過しているが、土壌深10cmまでの放射性セシウム濃度は未除染箇所よりも低く維持されていた。このため、除染箇所における林床面の放射線量率も同様に未除染箇所よりも低かった。ただし、両箇所の放射性セシウム濃度の深度分布の様子は異なっており、除染箇所では未除染箇所よりも浅い深度(分解の進んだリター層)で最大値を示した。 次に、森林土壌を透過するガンマ線を再現するため、モンテカルロ法に基づいたガンマ線の土壌透過シミュレーションを行った。透過ガンマ線量率は、土壌層内で生じた散乱成分を含むため、線減衰係数から期待される線量率よりも大きくなるが、シミュレーションでは透過土壌層の厚さが薄い場合は(5cmまで)、ガンマ線の土壌透過実験によって求めた透過線量率をほぼ再現できた。しかし土壌層が厚くなると(10cm)、シミュレーション値と実験値の差が大きくなったため、計算精度の向上が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度研究実施計画では、土壌層を透過するガンマ線の線量率およびスペクトル波形を再現するモデルを作成する予定であったが、そこまでは至らなかった。ただ除染箇所も含めた森林土壌中の放射性セシウム分布とガンマ線量率およびガンマ線スペクトルの基本データの取得が終了し、使用する再現モデルの見通しも立てることができた。このため、遅れを取り戻し、全体計画を達成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、これまで蓄積してきた森林土壌中における放射性セシウム濃度と放射線量率の分布を調査やガンマ線土壌透過実験のデータを利用し、それらを再現する数値モデルの作成を急ぐ。数値モデルは、公開されているモンテカルロ法に基づいたモデルを使用することにしており、土壌層を通過する際のガンマ線の減衰および散乱の状況をより良く再現できることを平成27年度に確認している。研究最終年度となる平成28年度において、現地調査に導入できる測定技術の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
研究代表者の年度途中での異動があったため、調査日程の変更が生じた。このため旅費の支出金額が予定より少なくなったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。その他、使用機器類の故障や不調などがなかったことも、支出額の減少につながった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
土壌サンプル処理のための消耗品類(容器、袋)の購入、線量計の保守校正費、調査旅費、学会参加費に使用する。
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