2014 Fiscal Year Research-status Report
過去1300年間の風水害被害の復元―地球温暖化・寒冷化の被害予測に向けて―
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26660137
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
多田 泰之 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (40397518)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 気候変動 / 風水害 / 被害量 / 防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「日本国内を対象に過去の温暖な時期、寒冷な時期ではどちらが1.災害の発生頻度が高いのか、2.甚大な災害が発生しやすいのかを明らかにすることを目的に、次の2点を実施する。(1)日本全国の過去1300年間の風水害の被害量を記述された古資料、行政資料などを公立図書館、公文書館、博物館などから網羅的に収集する。そして、①風水害の発生年月日から風水害の発生頻度を、②死亡者数、山崩れ数、流失家屋数等の風水害の被害量の時代変化を定量化する。(2)近年の気候変動研究をもとに①マウンダー極小期(1645年-1715年)等太陽活動が低く寒冷化した時代、①平均的気温の時代、③中世の温暖期等太陽活動が高く温暖化した時代(現代)の3種類の時期に分け、各時期の風水害の発生頻度、被害量を比較する。(1)、(2)の検討によって、温暖化、寒冷化した場合の風水害の危険度を明らかにする。 研究初年度の本年は、日本全国の過去1300年間の風水害の被害量が記載された古資料、などを公立図書館等から網羅的に収集した。また、収集した資料から風水害の発生年月日や死亡者数等の風水害に関する被害量を抽出し、時系列に整理する作業を進め、今年度は2000件程度集めることができた。現時点における結果は、わが国は明治29、30年の治水三法ができるまで、1件の風水害で数千人から大きい場合には数万人の死者数が出ていたことが明らかとなった。しかし、明治29、30年の治水三法が制定されると万人の死者数が千人となり、太平洋戦争後、土木技術が近代化すると死亡者数は千人から百人となり、森林が充実した現代では数十人のまで減少していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の事例収集によって、風水害の被害量の概要を収集できた。また、時代によって死亡者数などには変動があることも明らかになりつつあり、当初の予定通り研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き資料の収集と災害量の整理を行い、事例を増やし、過去の温暖な時期、寒冷な時期ではどちらが①災害の発生頻度が高いのか、②甚大な災害が発生しやすいかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
公立図書館などに出張しなくても、文献を送付してもらえるシステムが充実しており出張回数が少なくてすんだため。また、購入予定の文献も所内にあるなどし、経費を節約することができたたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
近年の災害の頻発に伴い申請段階では発刊されていなかった歴史災害を取り扱った内容の書籍が増えつつある。これらは図書館などにはまだ整備されていないものが多いので、これらの購入費用に充てる。また、文献だけでは当時の災害の状況を正しく理解できないので、直接現地を訪れ、文献内に記載されている内容を正確に理解するための旅費として用いる。
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