2014 Fiscal Year Research-status Report
国産針葉樹の直接酵素糖化処理に向けたイオン液体前処理法の開発
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26660138
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中川 明子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (30323249)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国産針葉樹 / イオン液体 / 酵素糖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内の木質バイオマス資源、とくに針葉樹材からのバイオエタノール生産の実現に向け、国産針葉樹材からセルロースを単離することなく溶解を最小限に抑え、結晶構造のみを変化させる温和な処理条件を見いだすことにより、酵素糖化効率を向上させる、イオン液体を用いた前処理技術を確立する。イオン液体処理の条件として、既往の研究において、イオン液体の種類、バイオマスの処理量、処理温度、処理時間、水分が挙げられているが、セルロースの結晶構造におよぼす影響は明らかにされていない。そこで、セルロースの結晶構造に影響をおよぼすであろう、処理温度、処理時間、水分の影響について検討した。 イオン液体処理における水分の影響についてトドマツを用いて検討したところ、残渣率は96%とほとんど溶解しなかったが、未処理木粉の酵素糖化率が3.7%であったのに対して水分量が10,20%の場合は約60%前後と著しく向上した。しかし50%まで水分量を増加すると38%まで低下した。FT-IRおよびX線回折の結果から水分量の減少とともに、セルロース結晶構造の減少・セルロースIの減少・セルロースIIの増加が示唆された。 またイオン液体処理条件の影響について、スギを用いてイオン液体処理における温度および処理時間により酵素糖化率の検討を行った。イオン液体処理で残渣率は95%前後とほとんど溶解しなかったが、酵素糖化率は未処理木粉が約3%であったのに対して、処理温度および処理時間が増加するとともに11-58%と著しく向上していた。元素分析の結果からイオン液体の吸着量は試料に対して1-3%と充分除去できており酵素糖化に影響がないことが明らかとなった。X線回折の結果から酵素糖化率向上とともにセルロース結晶構造の減少・セルロースIの減少・セルロースIIの増加が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イオン液体処理の条件として検討した、セルロースの結晶構造に影響をおよぼすと考えられた処理温度、処理時間、水分量についてほぼ検討を終了している。 水分量を厳密にコントロールした場合、10-20%で酵素糖化率は最大であり、水分量を厳密にコントロールせず約10%(気乾状態)で処理温度および時間について検討したところ、温度および時間の増加とともに酵素糖化率の上昇していることから、酵素糖化率に関してはほぼ最適条件を決定できたといえる。X線回折については全ての試料の分析は終了していないが酵素糖化率の変化とともに結晶構造が変化する傾向はつかめており、当該年度に予定していた研究内容はほぼ終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
「イオン液体の回収方法と酵素糖化率におよぼす回収したイオン液体の再使用の影響」 ○水可溶部からのイオン液体の回収法(担当:岸野正典(連携研究者))前年度で検討した、成分の溶解を最大限押さえた条件におけるイオン液体[Emim]Acの回収法について、リグニンや抽出成分、低分子化した糖類などの各種溶解成分の影響、水や溶解成分の除去および精製法について検討する。 ○回収したイオン液体の再使用について:繰り返し使用回数の影響(担当:岸野正典(連携研究者))[Emim]Acの回収および繰り返し利用により蓄積される溶解成分由来の不純物が及ぼす影響について検討する。 ○回収したイオン液体の再使用について:回収イオン液体の処理時の不溶部結晶構造への影響(担当:中川明子(代表)、研究協力者1名)回収イオン液体を再使用した場合、除去しきれなかった溶解した成分が木材の溶解および再生セルロースの酵素糖化率の低下を生じることが問題であった。そこで回収[Emim]Acを用いて不溶部結晶構造および酵素糖化率への影響について、前年度の手法を用いて検討する。
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